「大相撲九州場所・10日目」(18日、福岡国際センター) 義ノ富士が横綱大の里を初対戦で押し出した。熊本出身の24歳が…

 「大相撲九州場所・10日目」(18日、福岡国際センター)

 義ノ富士が横綱大の里を初対戦で押し出した。熊本出身の24歳が初の金星を獲得し、ご当地場所を沸かせる7勝目。大の里に初黒星をつけた。草野から改名し、スピード出世で大銀杏を結えないちょんまげ関取が大仕事を遂げた。新関脇安青錦は玉鷲を寄り切って1敗を守り、賜杯争いで首位に並んだ。欧勝馬を下手投げで退けた横綱豊昇龍が勝ち越しを決め、1差で追う。大関琴桜は王鵬を押し出し、3連勝で星を五分に戻した。

 館内が沸騰した。無傷だった大の里を撃破。義ノ富士は「自分の相撲を取れて金星。歓声がすごかった。うれしい」と喜んだ。初金星で懸賞32本に「厚くて手の感覚が分からない」と声を弾ませた。

 左差しを狙い、やや右寄りに仕切った。立ち合いで少しはじかれた。「もう一回、狙って左が入った。あとは覚えていない」。左がのぞくと一気に出て押し出した。

 この日の朝、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)に「どうやっていくんだ」と作戦を問われ「もろ差しで走ります」と答えた。大の里は右四つ。だから右は差せる。焦点は左を差せるか、だった。師匠は「(大の里は)最初、左を固めてくるから入らない。我慢して、絶対(左)上手を取るな。もう一回、差せ」と話した。義ノ富士が「自分もそう考えています」と応じると「頑張れ」と返された。有言実行、会心の金星だった。

 元競輪選手の父・信一さんも熊本から来場した。自身のしこ名入りタオルは、担当者が「先場所の売り上げから想定して入荷したが予想以上」と売り切れ、前日に再入荷したばかり。多くのタオルが揺れ「応援に応えないと」と、背中を押された。「義ノ富士」が一気に広まる一日になった。

 座布団は会場の椅子に固定されており、乱舞する金星おなじみの光景はお預け。義ノ富士は「さみしい。次は結びでやりたい」と頼もしかった。