<天皇杯:神戸2-0広島>◇16日◇準決勝◇パナスタヴィッセル神戸がサンフレッチェ広島を2-0で破り、2度目の優勝を果た…
<天皇杯:神戸2-0広島>◇16日◇準決勝◇パナスタ
ヴィッセル神戸がサンフレッチェ広島を2-0で破り、2度目の優勝を果たした前回大会に続く決勝進出を決めた。
神戸の勝利を大きく引き寄せたのは、FW佐々木大樹(26)がPKで決めたチーム2点目だった。
1-0の後半19分、DF酒井高徳が右からクロスを入れると、このセカンドボールにFW大迫勇也が反応。左足でシュートを狙うと、広島GK大迫敬介がこれに反応し、両足を広げてシュートストップを試みた。その瞬間、同じく反応した神戸MF武藤嘉紀がGKの足に当たって転倒。その場はいったん流されたが、同22分にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)でのチェックによりPKと宣告された。
リードを広げるビッグチャンス。吉田孝行監督は「武藤が倒されたので、武藤に蹴らせようと思ったけど(痛みで)蹴れないということであれば、サコ(大迫)に」と大迫を指名した。しかし大迫がゴール左下に蹴ったボールは、GK大迫に止められてしまう。
それでもキック前にGK大迫が前に出たという判断で、PKのやり直しが命じられることに。もう1度大迫がキッカーを務めるかと思われたが、ここで珍しい“選手交代”が行われた。指揮官は「サコが外したので、キッカー変えろと(笑い)」。そこでボールを持ったのが佐々木だった。
1度目のキックを大迫に譲った武藤は「(1度目は)ひざに力が入らなかったので。(2度目は)『あそこで蹴るなら最初から蹴れよ』と思われそうだし、大樹も蹴りたそうだったので」と2度目もアピールはせず。吉田監督は明確に佐々木を指名したわけではなかったというが「ベンチを見たら(自分が)いけっていう感じやったんで、ありがたく受け取った。驚きは若干あったけど『任せてくれるんや』と」と認識した佐々木が、自分のものにした。「ゴール裏に神戸サポーターがいたので安心して蹴られた。決まる気がした」。1度目の大迫と同じゴール左下に鋭いボールを蹴り込んだ。
いつも以上に強いゲキを受けた中でのPK弾だった。吉田監督は「大樹にはハーフタイムに結構厳しく『前半のパフォーマンスじゃダメだ。でも後半、戦うことは誰でもできるから戦え。お前絶対点取るから』と伝えた」と明かした。これを受けた佐々木は「1年目から一緒にやっているし、常に(監督から)愛情を感じてやってきた。雷をここで(自分に)落とす、落とさないっていうところは、タカさん(吉田監督)なりにいろいろ考えて言ってくれていると思うので、期待に応えるっていう意味で、後半は切り替えてやった」。両者の思いが結実した形として生まれたゴールになった。
佐々木はこれまでは自分で獲得したPKしか蹴ってはいけないと決められていたが、チームメートが取ったPKでの貴重な追加点。「前半からの流れがあったからなのかわからないけど、そういうのもあるかもしれないです」と笑い、吉田監督は「たまたま大樹が決めて良かった」と穏やかな表情で語った。【永田淳】