<Nikkan eye>日本代表(FIFAランキング19位)が14日の国際親善試合でガーナ代表(同73位)に2-0で快勝…

<Nikkan eye>

日本代表(FIFAランキング19位)が14日の国際親善試合でガーナ代表(同73位)に2-0で快勝した。10月のブラジル戦に続く連勝。その裏側には何があるのか? 日刊スポーツの担当記者がゲームの機微や舞台裏に迫る「Nikkan Eye」。今回はガーナ代表のオットー・アッド監督(50)が舌を巻いた日本代表の右サイド、その戦術に焦点を当てる。

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試合後の会見、アッド監督に日本代表で印象に残った選手についてたずねた。その回答として守備の要となった谷口に続き、堂安と久保の名前が挙がった。

「ウインガーの2人。あらかじめ知っていたけど止められない。内側に入って“オーバーロード”を作ることに優れていた」

「オーバーロード(過負荷)」とは、ピッチのどちらかのサイドなど一定のゾーンに選手を意図的に集めて密集を作りだし、相手に「過負荷」をかける戦い方。その密集局面を打開することで一気にチャンスを広げるという戦術。まさに日本の強みがここにある。

例えば先制点。縦パスが相手FWに入ったところを谷口がつぶしにかかる。すかさず右ボランチの佐野が取り切り、久保とのワンツーから前へボールを運び、手薄となった左サイドの南野へ素早くラストパスして得点につながった。

日本代表の右サイドにはシャドーの久保とウイングバックの堂安がいる。この2人がキーマン。俗に言う「鳥かご」という練習法がある。狭いスペースで複数選手が中の鬼を避けながらパス回しを行うものだが、公開練習でもよく目にする。足もとがうまい選手が多い中、特に久保と堂安のうまさは際立ち、狭い空間、少ないタッチ数で相手を翻弄(ほんろう)している。

その「鳥かご」を実戦の右サイドに仮想設置。ボランチの佐野や1トップの上田らも近い立ち位置を取ることで相手複数も引き寄せられる。そこを攻略すれば、視界は一気に逆サイドへと向く。その仕上げとなった左サイドには南野や中村が待ち構える。狙い通りパスを受けられれば、目の前にはゴールが広がるという算段だ。この意図的に1対1を作り出す戦術は「アイソレーション(孤立)」と言う。そこに突破力あるアタッカーを配し、オーバーロードの先にゴールという果実を実らせる。

冒頭のアッド監督はこう言葉を続けた。「2人が連係を取ってオーバーロードをかける上、堂安と久保のスイッチング(入れ替わり)についていけない。最終的に1対1に持ち込まれ、そこで競り負けてしまう」。ドイツ生まれドイツ育ちの戦術家をして、脱帽したような言い草だった。

この「オーバーロード」は攻撃だけでなく、守備でも効いてくる。密集を作り出すことによってボールロストしても、即時奪回につなげられる。相手のカウンターを防ぐという面も付随する。負傷者を除き9人が10月のブラジル戦と同じ先発メンバーだった中、攻守の積み上げが色濃くなった一戦だった。何より久保、堂安の近くには進境著しい佐野が構える。相手ボールをつみ取るだけでなく、広い視野と確かな状況判断とテクニックで、もはや欠かせない選手となっている。

ガーナ代表指揮官は「プレスがかかっている時に、例の佐野ですね」。堂安、久保と並べて佐野の名前も挙げ「彼らにゲームを支配された」。成果と課題のサイクルを回し、日本代表はW杯ロードを着々と進んでいる。【佐藤隆志】