「プロレス・ドラディション」(14日、後楽園ホール) メインイベントで、71歳の藤波辰爾が、新日本プロレスの前IWGP…
「プロレス・ドラディション」(14日、後楽園ホール)
メインイベントで、71歳の藤波辰爾が、新日本プロレスの前IWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJr.(38)とシングルマッチ60分一本勝負を行い、9分42秒、ザックドライバーで玉砕した。敗れはしたものの、現役バリバリのトップ選手相手に健在のドラゴン殺法で戦い抜き、満員となった1473人の観客は拍手喝采。現役最強レスラーと異例の一騎討ちを終え、「現役としてリングに上がっている以上は、時折悲鳴を上げるくらいの試合をしておかないと、声を大にして現役と言えない。(まだ)一つ二つ夢があるので、叶えるまでは現役を続けていきたい。そういう意味ではザックというすごくいい選手とこの時期に当たれて感謝ですよ」と感慨を込めた。
先月までIWGP世界ヘビー級王者だったザックに対し、序盤は相手の得意とするグラウンドで攻め立てられたが、藤波もスモールパッケージホールドやアームロックで切り返すなど、クラシカルなテクニックで応戦。強烈な左張り手で劣勢を打開し、ドラゴンスリーパーで締め上げると場内が沸いた。さらに、伝家の宝刀ドラゴンスクリューからの足の字固めで相手の脚を破壊。最後は力尽きたものの、ドラゴン健在にファンは歓喜し、少年時代からVHSで藤波の試合を何度も見てきたザックも「こんなに感激した試合はない」と、夢だった大先輩との手合わせに最敬礼した。
大一番を終え、自分の足でリングを降りた藤波は「ホッとしました。相手が相手なので。彼も半分も(力を)出してないかもしれないが、もっと自分も(若くて)いいときに彼とやりたかったな。(ザックは)うまいね。引き出しをいっぱい持っていてね。今日は引き出しを1つか2つくらいしか出してないんじゃない?彼のレスラー人生の一つの夢をかなえてあげられた。昔のスティーブ・ライトに似ているね」と充実の表情で振り返った。
70代に突入してもドラゴンは健在で、昨年は新日本ジュニアのトップである高橋ヒロム(36)とシングルマッチを行うなど現役としての気概を示し続けている。今年はザックと肌を合わせ、「(目で)見て自分の感情だけで口走るんじゃなく、実際に彼らと戦っているから言えることなんだけど、すごい」と実感を込め、「やっぱり第一線で、特に新日本というトップの中でやっているのは伊達じゃないですよ。今は自分は声を大にして言える。(彼らと)対峙したので。対峙するまでは何事も自分たちの物差しで喋ってしまうが、(実際に)戦ってみることだね。(新日本には)素晴らしい選手まだまだいっぱいいるでしょ?(戦える)僕にとってはありがたいこと」と、古巣の後輩たちに目を細めた。
また、今大会は1995年に立ち上げた「無我」の30周年で、大会名に冠につけた。過去に恩讐もあった西村修さんが今年2月に亡くなったことを受けてのもので、「本当は(この場に)西村が立ってくれたらなと言うのが…。(今日の試合は)西村が手助けしてくれたんでしょう。藤波さん、ちょっと動きましょうよと、ケツをたたいてくれた」と、涙で声を詰まらせた。
来月には72歳となり、来年はデビュー55周年を迎える。「誰かがどこかで意地を張らないと。猪木さんを筆頭に、プロレスラーは夢を売る商売だから。自分の体力が続く限りリングに立ちたい。引退の二文字は見えません」と気炎を上げた。