<男子日本代表広報リポート 最終回>バレーボール男子日本代表の島崎圭二広報がお届けする「男子日本代表広報リポート」。ネー…
<男子日本代表広報リポート 最終回>
バレーボール男子日本代表の島崎圭二広報がお届けする「男子日本代表広報リポート」。ネーションズリーグ(VNL)から世界選手権まで代表チームに密着。舞台裏や秘話を交えながら、選手情報やトピックを不定期連載でお届けしてきました。今回が2025年の最終回です。
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約5カ月間、広報カメラマンとしてチームに帯同し取材する中で、印象に残った選手2人を紹介します。
今季の日本代表のスタートは5月。まずは戦力の底上げを図るため、代表経験の少ない若手中心の選手たち14人が集められました。
その中で9月の世界選手権のメンバーに残れたのは、たった1名。ミドルブロッカー(MB)の西本圭吾選手です。
身長2メートルオーバーが当たり前のMBで西本選手は189センチ。このポジションの中で最も背の低い彼は「常識を覆す」という強烈な目的意識を持っていました。
「ロサンゼルスオリンピックでコートに立ちメダルを獲得したい。これは夢や憧れではなく、僕にとってはクリアすべき目標。そのためには今シーズン世界選手権のメンバーに選ばれることが、最低限だと思っている。体格が小さいと言われる中で“常識を覆す”ことが僕のミッションなので」
言葉同様、プレースタイルも熱いのが西本選手の魅力です。練習中は誰よりも大きな声を出し、試合の時には派手なガッツポーズや雄たけびでチームを勢いづかせました。
ロラン・ティリ監督も「西本はグレートエナジーを持っている。試合に活気をもたらしてくれる貴重な選手」と最大限の賛辞を送りました。ひとつひとつ関門を飛び越えながら、世界選手権のメンバーに選ばれた西本選手。「常識を覆す」挑戦は、これからも続きます。
そしてもう1人はアウトサイドヒッター(OH)富田将馬選手です。24年パリ五輪では登録メンバー12人に入れず、交代選手として客席から観戦。今年にかける思いは誰よりも強いものがありました。
今季VNLの前半には「生まれて初めて」というキャプテンも務め、主力選手がいない若いチームを献身的に支えてきました。
「去年(パリ五輪)は悔しい思いをした分、今年からロサンゼルス五輪までは頑張ると決めていた。OHのメンバー争いがチームの中で一番熾烈(しれつ)。誰にも負けたくない」
石川祐希キャプテンや高橋藍選手といった主力が戻った、VNL千葉大会のアルゼンチン戦では、劣勢の場面で途中出場。安定したサーブレシーブでリズムを立て直し、フルセットでの勝利に貢献しました。
しかしそれでも…世界選手権のメンバーに入れませんでした。メンバー落ちを告げられたその日の夜、2人だけになると胸の内を明かしてくれました。
「もちろん悔しいですけど、何かあったら自分がサポートに回れるように準備しておきます。SVリーグで見返すプレーをして、来年絶対に戻って来ます!」
誰よりも悔しいはずなのに、不覚にも聞いている自分が涙ぐんだのを見て「大丈夫ですか!?」と笑いながら握手してくれたのを思い出します。
世界選手権に選ばれたOHはパリ五輪と同じメンバーです。その壁を突き崩そうとする富田選手戦いを、これからも見守っていきたいと思います。
今シーズンの男子日本代表に沢山の応援、ありがとうございました! 目標には届きませんでしたが、来シーズンも引き続き熱い声援をよろしくお願いいたします。
2年目を迎えるSVリーグ、男子は今月24日開幕です。
西本選手(広島サンダーズ)や富田選手(大阪ブルテオン)など躍動する選手たちの姿を、是非会場でご覧いただければと思います。
◆島崎圭二(しまざき・けいじ)1965年(昭40)2月7日、埼玉県羽生市生まれ。テレビ制作会社のディレクターとして、TBSスポーツ局で勤務。バレーボール男子日本代表担当として、05年から21年まで取材。東京五輪後は1度バレーボールの現場から離れたものの、恋しさから広報カメラマンとして復帰。