<Nikkan eye>日本代表(FIFAランキング19位)が再び世界を驚かせた。14日に東京・味の素スタジアムで行われ…

<Nikkan eye>

日本代表(FIFAランキング19位)が再び世界を驚かせた。14日に東京・味の素スタジアムで行われた親善試合で、史上最多5度のW杯制覇を誇る「サッカー王国」ブラジル(同6位)から歴史的初勝利を挙げた。前半2点のビハインドから、後半3点奪って試合をひっくり返した。会場が熱狂に包まれた歴史の目撃者として、その舞台裏を深掘りする。

   ◇   ◇   ◇

激闘から数日経過したが、改め実感する勝利のカギは「同じ目線」だ。森保一監督(57)がブラジル戦に臨む心構えとして何度も口にしたキーワードで、一体感を持って立ち向かう重要な要素となった。

日本はカナリア軍団を必要以上に恐れることがなくなった。かつてのブラジルは、50年の自国開催から78年アルゼンチン大会まで4度の決勝進出と2度の4強入りを果たすなど、圧倒的な成績を残した。また94年W杯米国大会で久々に優勝を飾ると、3大会連続で決勝進出。その強さは強豪の中でも群を抜いていた。しかし、近年は勝ちきれていない。8強止まりばかりで、唯一4強入りした14年の自国開催は、ドイツに1-7の大敗を喫した。「王国」と呼ぶには寂しい結果が続いている。

今回の日本代表メンバーの年齢に注目すると、00年以降生まれが9人。ブラジルが最後に優勝した02年日韓大会の記憶がないであろう世代が一定数いるチームだ。ブラジルの印象を問われた01年生まれのMF久保建英(24=レアル・ソシエダード)は言った。「ただ単に強豪の1つって感じですかね」。強がりでも何でもなく、自然なリスペクトの仕方だった。

98年生まれのMF田中碧(27=リーズ)は「ブラジルのメンツを見ても中盤の選手で言えばウルブス、ニューカッスルだったりプレミア(リーグ)の選手なので、日頃の相手だと思う。個人のバトルで言えば日頃の延長線」と言い切った。

いざ試合が始まり、はたから見ると、前半は顕著な実力差をまざまざと見せつけられたようだった。しかしピッチ上で戦った選手たちは違った。キャプテンマークを巻いた95年生まれのMF南野拓実(30=モナコ)は、ハーフタイムに仲間へ呼びかけた。「『まだこのゲームは死んでいないよ』と。監督ももちろん声をかけてますし、僕もそう思った。1点取ったらまだ絶対勝負できる。選手全員がたぶんそう思っていたと思います」。

ロッカールームの様子を森保監督も「選手たちが前半厳しい戦いだったところを切れずに戦い続けてくれた。ハーフタイムでみんなが建設的に後半どう修正したら良いか、冷静にコミュニケーション取ってくれた」と振り返る。コーチ陣から、後半は誰がどこにプレスに行くかを明確に提示され、積極性が増加。逆転劇につなげた。

22年W杯カタール大会で連破したドイツ、スペインに続いてW杯優勝経験国を倒した。FIFAランキングからも格上相手に向かうに当たって重視することを聞かれた森保監督はこう答えた。

「選手たちに(伝えていることは)2つあって、1つは同じ目線で、どの国と戦っても自分たちが勝てる、勝つために戦うんだという気持ちを持って挑むということ。そこから何ができて何ができないかを考えよう、同じ目線で戦おうということと、もう1つは全力をぶつけるということです。我々は勝つために戦う、準備する、挑むということを同じ目線で持っていこうというところ、勝利にこだわるところを言っている中で、勝つだけではなくて、自分たちの力をどんな相手でもまず出し切って、100%ぶつけていく。その中で自分たちが成長するためにチャレンジしていこうと選手たちに言っています」

かつては所属クラブだけを見ても気後れしてしまうような選手層の違いだったが、今を生きる日本選手たちにその意識は皆無。時代は、変わった。【日本代表担当=佐藤成】