巨人長野久義外野手(40)が、今季限りでの現役引退を13日までに決断した。近日中に正式発表する。日本ハム、ロッテと2度の…

巨人長野久義外野手(40)が、今季限りでの現役引退を13日までに決断した。近日中に正式発表する。日本ハム、ロッテと2度のドラフト入団拒否を経て、09年ドラフト1位で巨人に入団。数多くのタイトルを獲得し、12~14年のリーグ3連覇にも貢献した。1度はFAの人的補償で広島に移籍も、無償トレードで巨人に復帰。今季は開幕直後から2軍生活が続き、出場は先発2試合を含む17試合のみ。DeNAとのCSファーストステージ第2戦でベンチ入りしたものの、出番はなかった。

   ◇   ◇   ◇

長野が漆黒のバットを静かに置く。プロ入りから16年。通算打率2割8分の高確率で1512安打を積み上げた。故障が少なく丈夫な体と強靱(きょうじん)な精神力で、いばらの道を進んできた。「痛いとか言ってたらダメだと思う。プロなので」が持論だった。日々、当たり前のようにグラウンドに立つことだけは譲れないポリシーでもあった。

今季ここまで1軍で17試合に出場。主に代打としてベンチを温めた。2軍生活が続き、7日2日の阪神戦で退場処分となった阿部監督には「僕は1軍から退場になっています」とチームのLINEグループに投稿し、笑いを誘って停滞気味のムードを一変させた。1軍復帰した同17日ヤクルト戦では、懲罰交代となってベンチでぼうぜんとする入団2年目の泉口に寄り添い、励ますシーンが中継局のカメラに映った。存在、行動が大きな戦力だった。

こんなに愛されるプロ野球選手は数少ないだろう。チームメートはもちろん、他球団の選手、スタッフから分け隔てなく慕われた。多くのファンの心を射抜き、わしづかみにもした。殊勲打後の発言では「失投」「甘い球」という言葉を嫌った。「自分も相手の投手も真剣。だから失投、甘い球というのは僕が決めることではないし、相手に失礼だと思う」が理由だった。対戦相手でさえ愛したから、愛された。

一方で、仲間であっても鍋をつつき合うのだけは拒絶した。「絶対に自分のお箸でやらないでください。取り役は僕がやるので大丈夫です」。しゃぶしゃぶ、すき焼きは、自ら進んで取り分けた。大皿料理も同様で、九州男児の豪快さとは裏腹に繊細な一面も。表裏一体、そのすべてにこだわりがあった。

日大時代の06年ドラフトで日本ハムから4巡目指名も入団を拒否した。社会人時代の08年ドラフトでロッテから2位指名も、再び入団を拒否。09年、3度目のドラフト指名で巨人に入団した。12年に日本一になったときに「日本ハムさん、ロッテさんに指名していただいてうれしかった。今でも感謝しています」と言っていたことを鮮明に覚えている。野球人、長野久義に感謝したい。ありがとう。【為田聡史】

◆長野久義(ちょうの・ひさよし)1984年(昭59)12月6日、佐賀県生まれ。筑陽学園-日大-ホンダ。2度のドラフト指名を拒否し、09年1位で巨人入団。10年新人王。11年首位打者、12年最多安打。11~13年ベストナイン、ゴールデングラブ賞。18年オフ、丸のFA移籍に伴う人的補償で広島移籍。20年9月22日巨人戦で全球団本塁打。22年オフに無償トレードで巨人復帰。13年WBC日本代表。180センチ、85キロ。右投げ右打ち。夫人はテレビ朝日の下平さやかアナウンサー。