◇米国女子◇ビュイックLPGA上海 最終日(12日)◇上海旗忠GC(中国)◇6703yd(パー72)世界ランキング1位…

世界ランキング1位に競り負けた勝みなみ(Hu Chengwei/Getty Images)

◇米国女子◇ビュイックLPGA上海 最終日(12日)◇上海旗忠GC(中国)◇6703yd(パー72)

世界ランキング1位ジーノ・ティティクル(タイ)との5ホールに及ぶプレーオフに敗れた勝みなみは、中継局WOWOWのインタビューで「まだまだ自分の弱さを痛感します」と語った。本当にそうだろうか。“ミスをする競技”のゴルフに完璧はない。悲願の初優勝を目指し、ティティクルと正規ラウンドを含めて23ホールの死闘で間違いなく力を出し切った。

最終組で首位から出て、前半3バーディの33。同組のティティクルが32でスタート前の2打差を1打差に詰められて折り返したが、10番から13番までに3バーディを奪い、残り5ホールでリードを4打差に広げた。自力で伸ばして絶対的なアドバンテージを得たと思われた。

ところが、そこから悪夢が始まる。ティティクルが14番でバーディを奪い、15番はグリーン手前からチップインを決め、16番(パー3)は1.5mにつけるスーパーショットで3連続バーディ。リードが1打となった勝は15番(パー5)でティショットをバンカーに入れてパーオンに失敗しながら、劇的な約10ydのチップインを決めた。ティティクルはピン奥6mに2オンしたが、ラインはきつい下りの大きなフックライン。リードは守ったと思われたが、なんとイーグルパットを決められて通算24アンダーで並ばれた。

18番を使ったプレーオフ2ホール目もティティクルが奇跡を起こす。勝がフェアウェイを捉えた後、左に広がる池に落とし、勝負あったかと思われたのもつかの間、ドロップしたラフからの3打目がグリーン右端にキャリーし、大きなダウンスロープに沿って左サイドのピン60cmへ…。勝は5mのバーディパットを決められず、互いにパーとなって勝負は持ち越された。10番を使った5ホール目。勝はフェアウェイから2打目をダフり、花道から狙ったチップインバーディがならず、2打目をベタピンにつけたティティクルに敗れた。

確かにミスはあった。しかし、首位で迎えた最終日にボギーなしの65を、しかも勝負どころのサンデーバックナインを4バーディで4つ伸ばして終えた。それでも終盤14番から4ホールで5つ伸ばし、プレーオフも池ポチャをミラクルパーでしのいだ相手がすごすぎた。

「結構いいゴルフをしていたんですが…。私も7アンダー(65)で回ったけど、ジーノが9アンダー(63)で回って」。その勝の言葉は偽らざる本音だったはずだ。

結構いいゴルフをしていたんですが…(Hu Chengwei/Getty Images)

米ツアー本格参戦前の10試合を含み通算82試合目だった。優勝歴のある“現役米ツアーメンバー”で最も遅い初優勝は、参戦2年目の4月に「シェブロン選手権」を制した西郷真央の49試合目。今季開幕前には「私、実力は全然あると思うし、優勝もできると思うんです。だけど、気持ちが優勝ってところまでいけなかったのかなって」と話していた。

ルーキーシーズンの2023年は出場23試合でトップ10が2度、予選落ち8度で年間ポイントランク74位。昨季もランク78位に終わったが、序盤5試合で2度のトップ10を記録するなど手ごたえがあった。「とにかく1勝。そうなれば、勝ち方もわかって、自信もついて、すぐ2、3勝できる気がする」と思い、開幕を迎えた参戦3年目。大会前は平均ストロークが70.91(34位)と昨季の71.63(67位)から上昇し、ポイントランクもキャリアハイペースの27位で迎えていた。

しかも流れは最高。山下美夢有が優勝したメジャー8月「AIG女子オープン(全英女子)」で2位、3週前「ウォルマートNWアーカンソー選手権」は首位発進しながら悪天候で大会中止に。そんな不運も乗り越えて、前週「ロッテ選手権」は3位に入った。

すべてが終わった後、グリーンで大喜びするティティクルの横で勝は死闘を見守ってくれた“後輩”たちに感謝した。吉田優利、山下、竹田麗央馬場咲希を一人ずつ抱き寄せて「ありがとね」と頭を下げた。悲劇的な惜敗にも泣かなかった。勝は「私はまだまだ強くなれると思います。これからも応援、よろしくお願いします」と言って、インタビューを締めくくった。

<現在の米ツアーメンバー:初優勝までの出場試合数>
渋野日向子/1試合/2019年「AIG全英女子オープン」(イングランド)/本格参戦前
竹田麗央/6試合/2024年「TOTOジャパンクラシック」(日本)/本格参戦前
笹生優花/7試合/2021年「全米女子オープン」(米国)/1年目
古江彩佳/19試合/2022年「スコットランド女子オープン」(スコットランド)/1年目
岩井千怜/19試合/2025年「リビエラマヤオープン」(メキシコ)/1年目
山下美夢有/28試合/2025年「AIG女子オープン(全英女子)」(ウェールズ)/1年目
岩井明愛/28試合/2025年「ポートランドクラシック」(米国)/1年目
畑岡奈紗/33試合/2018年「ウォルマートNWアーカンソー選手権」(米国)/3年目
西郷真央/49試合/2025年「シェブロン選手権」(米国)/2年目
※は日本開催。竹田は参戦1年目の2025年、通算11試合目に中国開催の「ブルーベイLPGA」でも優勝