<国内女子ゴルフツアー:スタンレー・レディースホンダ>◇第1日◇10日◇静岡・東名CC(6435ヤード、パー72)◇賞金…

<国内女子ゴルフツアー:スタンレー・レディースホンダ>◇第1日◇10日◇静岡・東名CC(6435ヤード、パー72)◇賞金総額1億2000万円(優勝2160万円)

長いトンネルから抜け出した。コロナ禍で統合された20-21年シーズン賞金女王、21年東京五輪銀メダルの稲見萌寧(26=フリー)が、2年ぶりのビッグスコアで6位と好発進した。6バーディー、ボギーなしの66、6アンダー。首位の河本結らと1打差につけた。今季は極度の不振に陥っていたが、最後に優勝した23年米ツアー、TOTOジャパンクラシックで「64」や「65」をマークして以来となる、ビッグスコアで上位に顔を出した。復活の裏に尊敬するツアー通算50勝、不動裕理の金言があった。

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東京五輪終盤で、金メダルに猛然と迫ったころの、強い稲見が帰ってきた。3番パー5で幸先よくバーディーを先行させると、7番からは3連続バーディー。パー4の7、9番は4メートルのパットを沈め、パー5の8番はバンカーからの第3打を1メートルにつけて伸ばした。最後までボギーなしで回りきり、18番もバーディーで締めた。終始隙のないゴルフ。22年から年間ポイントで争う国内女子ツアーの最後の賞金女王は強かった。

「先週から少しずつ良くなっている実感があった。いいスタートを切れたのは自信というか、ホッとした部分がすごくあった」。前週までは険しい表情続きだったが、随所に笑みがこぼれた。2週間前までの10戦は、予選落ち9戦と棄権1戦。不振は米ツアーに参戦した24年から続いており、乱れたスイングを戻せず、通算13勝へと導いた正確無比なショットメーカーの姿は、見る影もなくなった。

8月のCATレディースでついに、第1ラウンドで初の最下位に沈んだ。ホールアウト後は「全然うまくいかない。直すところが多くてパンク中。何を直したらいいか分からない」とこぼし、翌日スタート前に棄権した。心も限界だった。

それでもきっかけを求めて出場を続けると前週、日本女子オープンで同組の不動に言われた。「ショットが悪ければショートゲームでカバーすればいい」。稲見は「人生で一番響いた。あれだけのショットメーカーが言うのだから絶対」と力説。ショットにこだわり過ぎていた自分に気付かされた。グリーン周りの技術で伸ばした8番は不動の言葉の真骨頂。尊敬するレジェンドの言葉を胸に、次は優勝争いに加わって完全復活を目指す。【高田文太】