<日本代表の舞台裏:連載2>高校日本代表は9月に沖縄で行われたU18W杯で大会2連覇に挑むも、決勝で米国に敗れ準優勝に終…

<日本代表の舞台裏:連載2>

高校日本代表は9月に沖縄で行われたU18W杯で大会2連覇に挑むも、決勝で米国に敗れ準優勝に終わった。8月28日の合宿初日から9月14日の決勝まで18日間、日本代表の舞台裏を全3回で振り返る。第2回は“横浜カルテット”の活躍を紹介する。阿部葉太外野手、奥村凌大内野手、為永皓内野手、奥村頼人投手(いずれも3年)。横浜(神奈川)からは4人も代表に選出され、チームを引っ張った。

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4人だからこそ、世界の舞台で“横浜野球”を表現できた。阿部は「1人ではなく、2人でも3人でもない。4人だからできたと思うんです。センターラインに内野に2人。打順も並べたのが大きい」と振り返る。9試合ほとんどの試合で3人が並んで主軸を担った。奥村凌は「3人が並ぶことでチャンスでつなげられた。その強みがありました」と話した。

横浜の野球が発揮できた、と4人が口をそろえるのはスーパーラウンド第2戦のパナマ戦。決勝進出を決めた試合だ。1点ビハインドで迎えた6回。1死から4番阿部が右前打で出塁すると、打席には5番奥村凌。「阿部が一塁にいたら、盗塁を仕掛けるので、打席で待ってみたり、タイミングを外したりするんです」。カウント2-1から、阿部が狙い通りにディレードスチールを決めた。奥村凌が右飛で2死三塁と走者を進め、6番為永の中前適時打で同点に追い付いた。阿部は「ディレードスチールは打者が横浜の選手じゃないとできなかった。タイミングや打席に立つ位置もそう。凌大は1球待ってくれた」。2年半、積み重ねたあうんの呼吸が、土壇場で好機を広げた。

8回表タイブレーク、2死二、三塁で奥村頼がマウンドへ。プエルトリコ戦での好投の後で期待されたが、打者3人に対し1安打2四球で2点を勝ち越され降板。「頼人は好投の後は調子が上がらない。それも想定内ですよ(笑い)」と為永。焦りはない。それどころか「(サヨナラ勝ちした今夏神奈川大会準々決勝の)平塚学園戦を思い出した。これはいけるな、と思いました」。4点を勝ち越され迎えた8回裏、1死満塁から阿部、奥村凌、為永と横浜3選手の連打で同点に追いついた。9回裏のサヨナラ勝利につなげた。

阿部は「自分は初球で仕留めた。凌大と為永も初球から振りにいった。ここぞというところでは、みんな1球で仕留めにいく。いつも村田監督に『初球の入り、しっかり仕留めろ』と言われてきたこと」。土壇場でも、落ち着いて、横浜らしく戦った。

ユニホームは違うが、前を見ても後ろを見ても、見慣れた顔がそこにはある。2年半、徹底的に練習を重ね、体に染み付いた野球が自然と生まれた。阿部は「仕掛けやすかった。見ている景色は横浜の景色でした」。為永は「ここ(横浜)で植え付けてもらった本能。それが自然と出たと思います」と、胸を張った。

昨年の神宮大会優勝にセンバツ優勝。そして、春季関東大会までの公式戦27連勝。夏は準々決勝で敗れ、春夏甲子園連覇は達成できなかったが、今年の高校野球を引っ張ってきたのは横浜だった。奥村頼は「今までやってきたことが間違いじゃなかったという証明になった」と、力を込めた。

大会後、グラウンドに足を運んだ4人は、後輩たちに声をかけた。「横浜の野球は本物だぞ」。世界に示した横浜野球。それを引き継ぐ後輩たちは、先輩たちの活躍を自信に、秋季大会を力強く戦っている。【保坂淑子】(つづく)