<陸上:日本選手権>◇5日◇第2日◇東京・国立競技場◇男子100メートル決勝など初めてのうれし涙。男子100メートル決勝…

<陸上:日本選手権>◇5日◇第2日◇東京・国立競技場◇男子100メートル決勝など

初めてのうれし涙。男子100メートル決勝で、桐生祥秀(29=日本生命)が、20年以来5年ぶり3度目の優勝を飾った。追い風0・4メートルの決勝で10秒23。平凡なタイムだったが、接戦を制して勝ちきった。中学から始めた陸上で多くの悔し涙を流してきたが、初めて歓喜の涙となった。男子110メートル障害は、優勝した泉谷駿介(25)と2位の野本周成(29)が、世界選手権代表に内定した。

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5年ぶりの勝利インタビュー。桐生が「すみません」と口元を手で覆って、号泣した。悔し涙ばかりを流してきた経験が、反射的にテレビカメラを避けるしぐさになった。ただこの夜の涙は、隠す必要も、恥じる必要もないものだった。

男子100メートル決勝。号砲への反応速度は、決勝8人の中で最速の0秒133。準決勝で狂っていた上体を起こすタイミングを修正。小池、多田の五輪組、関口、井上ら大学生と新旧が入り交じったレースで勝った。「最後の2メートルで横を見て。いける」。フィニッシュ後は左人さし指を突き上げて、雄たけびを上げた。

「泣くつもりはなかったんですが…。(後藤)トレーナーを見てウルッと来て。東京五輪もそうですが、悔し涙しか流していないんですが、中学から初めて喜んで泣いたのは初めて」

16年リオデジャネイロ五輪選考の日本選手権ではまさかの3位で「こんな形で内定とは思わなかった…」と号泣。東京五輪は400メートルリレー決勝でバトンがつながらず敗退。走ることもできず泣いた。13年4月、高3で10秒01を出し9秒台の期待を一身に浴びて、素直に感情を出すことは難しくなった。そんな男が29歳で、初めて歓喜の涙だ。

まだ世界選手権の切符はない。ランキングを上げるか、参加標準記録の10秒00突破を目指していく形。今年から厚底スパイクを使うなど、挑戦を続ける。「速いタイムではなかったが、勝ち切れた。30歳でも日本で勝負できるということを見せたい。若い力に負けないように」。ジェット桐生は健在だ。【益田一弘】