SKE48を3月末に卒業したプロレスラーの荒井優希(27)が、東京女子プロレスの7・21大田区総合体育館大会で、プリン…
SKE48を3月末に卒業したプロレスラーの荒井優希(27)が、東京女子プロレスの7・21大田区総合体育館大会で、プリンセス・オブ・プリンセス王者・瑞希に挑戦する。「今は100%プロレスラー」と自身の現在地を語った。
15歳から約12年間のアイドル活動。「やりたいことが全部できて、アイドルとして、自分自身として、一番幸せな時に辞めたかった」。その決断に悔いはなかったが、プロレスには未練があった。
女子プロレスを題材とし、AKB48グループが多く出演した深夜ドラマ「豆腐プロレス」から派生した、2018年のリアルイベントで女子レスラーを演じた荒井。21年5月、団体側のオファーを快諾し、東京女子からデビューした。
荒井は「最初は楽しそうだからやってみよう、無理だったら辞めようと思っていた」と述懐。ところが、同年夏にはプロレスの魅力に引き込まれ、プリンセスタッグ王座とインターナショナル・プリンセス王座を戴冠するなど活躍を続けた。アイドル引退を決断しても「プロレスラーとしてはまだ走り出したばかり。もっとやりたい。プロレスラー一本になるのは、自然な流れでした」と進路を定めた。
デビューから程なく感じたプロレスの魅力とは、何だったのか。
「課題がたくさん並ぶ環境、勝ち負けがしっかり出るところ、見てくれる方が一緒に一喜一憂してくれるところがやりがいでした。SKE48はダンスが独特で、ものすごく体力が必要。プロレスの試合で息が上がった時、歌って踊り続けたことで自分のメンタルが鍛えられたと感じて、プロレスに生きたんだなと思いました。アイドルはステージで、苦しくてもなるべく隠しますが、プロレスはリングで痛い時に『痛い』と言っていい。正直でいられるんです」
SKE48を卒業し、拠点を愛知から東京に移した。自宅から片道2時間かかり、練習参加数、出場試合数も限られていたが、他選手と同じになった。「最近はベストの状態で練習、試合に参加できる。今は100%プロレスラー。うれしいです」と声を弾ませる。
東京ではパーソナルトレーナーの下に通い始め、肉体強化に取り組む。お菓子が大好きだった食生活を見直し、自炊が増えた。休日は自宅の掃除が習慣となった。「お米をちゃんと食べるようになりました。得意料理はまだですけど、せいろ蒸しを始めました。健康に気をつけています。なんだか…やっと人間のスタートを切ったみたい」と、いたずらっぽく笑った。コスチュームはスカートをモチーフとしたものから、ショートパンツへ。167センチの長身、自慢の背筋がより映えるようになった。
23年3月にミサイルキックを初めて発射したアジャコング戦。今年3月に“女子プロレスの横綱”から激賞された里村明衣子戦など、団体外の強敵とも遭遇してきた。「自分だと分かりませんが、戦う目がいい、と言っていただくことが多い。里村さんにはたくさん褒めてもらい、とても自信になりました」と、手応えを口にした。
憧れのレスラーは限りなく人形に近いヨシヒコで「自分にはない運動神経に惹かれます」と真顔で語る。ある会場のバックヤードで椅子に置かれたヨシヒコを目撃した際は、赤井沙希に促され挨拶。「暗闇の中で座られていましたが、挨拶するとうなずいてくれたような…」と笑顔を見せた。
転機となった試合は、23年2月に武藤敬司が東京ドーム行った引退興行だという。自身も大会に参加し「みんなの心を動かす武藤さんに衝撃を受けました。視線を集め、そして心を動かすレスラーに私もなりたい」と心に決めた。ヨシヒコと武藤敬司…振り幅の大きさも、プロレスラーらしい。
今年4月には初の米国遠征を経験。ラスベガス大会では、レッスルマニアの影響で多くのポスターが貼られた街中、選手Tシャツを着用し、チャンピオンベルトのレプリカを手にするファンの姿を目撃。心に刺さった。「カルチャーショックですね。日本でプロレスがもっと広まってほしい。もっとビックになってほしい」と思い描くようになった。
その夢に近づくのが今回のタイトルマッチだ。「瑞希選手のどんなに苦しくても立ち上がり続ける気力、どんな体勢からでも技を出せる部分は私にはないところ。それでも自分の可能性を信じています」とキッパリ。「いろんな形で活躍できる令和のプロレスラーになります。皆に知ってもらえて、私がきっかけでプロレスを見に来てもらえるようになりたい」と誓った。
確かな理想を抱くプロレスラーの姿が、そこにはあった。