「阪神3-0ソフトバンク」(21日、甲子園球場) アクシデントに見舞われながらも、古巣を相手に交流戦自身初白星を輝かせ…
「阪神3-0ソフトバンク」(21日、甲子園球場)
アクシデントに見舞われながらも、古巣を相手に交流戦自身初白星を輝かせた。先発した阪神・大竹耕太郎投手(29)は、5回0/3を1安打無失点で3勝目。阪神では4人目で、育成出身の選手では史上初となる12球団勝利の偉業を達成した。両リーグ最多タイとなる今季15度目の完封勝利も導き、お立ち台に笑顔を咲かせた。
優しい笑顔でお立ち台に上がった。虎と鷹のファンの温かい視線が降り注ぐ。大竹が古巣相手の初勝利で、育成ドラフト出身選手では史上初となる12球団勝利を達成。「2年前に悔しい思いをしたので今回は絶対勝つぞというつもりで。お世話になった球団なので感謝の気持ちを込めて正々堂々と投げられた」。ハプニングもありながらつかんだ通算36勝目は記念すべき1勝となった。
好投の中で迎えた六回。先頭の代打・川瀬へ2球目を投じた後に左手の中指を気にするしぐさを見せ、ベンチへ下がってそのまま交代。人生で初めて指をつったが、試合後には元気に姿を見せ「もう大丈夫」と話した。そこまではわずか1安打と圧巻の投球。「元々いたホークス相手ということで気合が入って当然。初回からぶっ飛ばした」と三塁すら踏ませず。5回0/3を無失点に抑えた。
ようやく“恩返し”ができた。23年6月17日のソフトバンク戦。現役ドラフト後初めて元同僚と対戦。6回4安打1失点(自責0)と好投も、九回に岩崎が3失点し、逆転負けを喫した。「岩崎さんはその時の打者と同じ対戦だったと思うんですけど、そこも応援しながらリベンジ。自分としても気持ちがすごい晴れた」。当時を振り返り充実の表情を浮かべた。
他力も自力。大竹の思考は多くの人との関わりから生まれている。「自分で考えるだけでは無理。いろんな人に聞いたことが自分の考えになる」。満遍なく周囲の意見を聞き、「自分の中での感覚が(見ている)人によっては違う表現をすることもある」と学びに変わる。
「人のマネをするのとそれを自分流にアレンジする。バランスですね」と引き出しを増やす。「自分で何か考えてやっていくのも大事ですけど、他力を使えるのも自力みたいなところがある」。ソフトバンクと阪神の選手やコーチやトレーナー、いろんな考えを吸収してきた大竹だからこそ出てきた言葉だった。
記録が懸かる一戦で今季3勝目を手にした左腕。古巣には「レベルの高いチームでやったからこそ今の自分がある」と感謝。虎の選手らしく阪神百貨店のお菓子を差し入れた。「本当にいい出会いだったり、そういったものによって成り立っている」。両球団への思いを口にし、また新たな一歩を踏み出した。
◆大竹が全球団勝利 大竹が古巣・ソフトバンクから白星を挙げて全球団勝利を達成。NPB史上21人目、育成ドラフト出身選手では初の快挙となった。阪神投手では1983年・野村収、09年・久保康友、23年・西勇輝に続いて4人目。05年の交流戦開始後では、近鉄を含めた13球団勝利達成の3投手を含めて18人目。