「阪神1-2ソフトバンク」(20日、甲子園球場) 最後の最後まで勝利への執念をみせた。阪神は延長戦の末に、交流戦首位の…

 「阪神1-2ソフトバンク」(20日、甲子園球場)

 最後の最後まで勝利への執念をみせた。阪神は延長戦の末に、交流戦首位のソフトバンクに敗れた。互いに譲らぬ緊迫した接戦を演じた中で、中野拓夢内野手(28)が3安打の固め打ちでチャンスメークし、セ・リーグ首位打者に浮上。再三の好守でもスタンドを沸かせた。交流戦は3年連続勝率5割以下が確定したが、残り2試合、強い鷹に虎の意地を示し続ける。

 快音を連発し甲子園を沸かせた。中野が3安打猛打賞の活躍。ただチームは敗れ、「個人的にはよかったですけど、チームが勝てなかったので」と笑顔はなかった。

 難敵相手でもお手本のような打撃でヒットを重ねた。三回の第2打席、モイネロの投じた149キロの外角直球をしぶとく左前に運び、8試合連続安打をマーク。さらに五回にも同じ外角の直球を捉えて、三塁線を破った。マルチ安打とし、大山の同点打を引き出した。

 ピッチャーが代わっても勢いは止まらない。七回は右腕の松本裕の変化球を捉えて左前打。これで今季7度目の猛打賞となった。「引っ張りにかかってしまうとよくないのは分かっているので、ああやって逆方向に出てるのはいいことかなと思います」。コースに逆らわない打撃でヒットを量産している。

 3安打で打率は・308まで上昇し、セ・リーグの首位打者に浮上した。それでも「それは別に気にしていない。毎試合、毎試合、自分のやるべきことを積み重ねている結果だと思う。継続してやっていけるように頑張りたい」と表情は崩さなかった。

 打率3割を目標に掲げた今季は、試行錯誤を続けながら結果を残してきた。オフの自主トレから打撃フォームの変更に着手。シーズンが開幕してからも、小谷野打撃コーチのアドバイスを受け、微妙な変化を加えるなど、日々理想を追い求めている。

 グラウンド外でも積極的に動いていた。ある関東遠征前日。他の選手は夕方に移動したが、一足早く新幹線に乗り込む中野の姿があった。理由は他の選手から借りて、状態が上がっていたバットメーカーに相談に行くためだった。「あまりシーズン中にバットを変えることはなかったけど、今年は(状態が)いいから。いろいろ試すしかないかなって」。少しでも成績を残し、チームに貢献するため必死だった。

 この日は二塁の守備でも美技連発。同点の九回には犠打も決め、2番としての役割も果たした。攻守で存在感を放つ男は「チームが勝つために、自分がなにをやるかっていうのをしっかり考えながらやりたい」と視線を次に向けていた。