長期的な離脱が避けられない情勢となった佐々木。その状況に批判の声も強まっている。(C)Getty Images感心すら抱…

 

長期的な離脱が避けられない情勢となった佐々木。その状況に批判の声も強まっている。(C)Getty Images

 

感心すら抱かせるドジャースの姿勢

 佐々木朗希(ドジャース)は、暗中模索の日々が続く。現地時間6月15日には、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が「彼は先発投手だから調整には時間もかかるし、やるべき準備も多い。そう考えると、それ(彼が今季いないという前提で進める)は理にかなったやり方だ」と明言。先月9日のダイヤモンドバックス戦の登板後に判明した右肩インピンジメント症からの回復、そして復帰の目途が立っていないことが明らかになった。

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 佐々木は先月13日の負傷者リスト入りから軽いキャッチボールを消化したものの、負荷をかけた投球練習はなし。本格的な復帰計画の目途も立たない現況に、本人はもちろん、球団への反発や批判はおそらく避けられない。負傷者が相次ぎ、火の車状態となっている先発投手陣の編成事情を考えれば、なおさらである。

「どの球団にもそれぞれ魅力を感じたので、その中から1つだけを選ぶと言うのは非常に難しい決断でした。いろいろな意見があるのは重々承知しています。ただ、ここに来ると決めた以上、今は自分が出した結論がベストだと信じて、自分の定めた目標を信じて、自分の可能性を信じてくれる人たちのために前に進んでいきたい」

 入団会見でそう意気込み、大きな野心を持って挑んだメジャーリーグでの1年目。佐々木が本領を発揮しきたかと言えば、決してそうではない。おそらくこのままシーズン絶望の状態が続けば、「期待を裏切った」という批判的な声はより高まっていくはずである。

 それでもなお「今は彼が自信を持ってボールを投げられる状態を作らなければならないと思っている」(マーク・プライアー投手コーチ談)とドジャース側に焦りは微塵も見られない。その頑なとも言える姿勢は、驚きと同時に感心すら抱かせる。

 思えば、ロッテ時代も佐々木は慎重に扱われてきた。

 22年4月の日本ハム戦では、8回まで完全試合ペースの圧巻パフォーマンスを披露していた中で、当時の井口資仁監督は、途中降板を決断。そうした起用法に当時は「過保護」との声が方々から飛んだが、「いろいろ先々考えるとあそこが限界だったと思う」と指揮官が“令和の怪物”を擁護する時は幾度となくあった。

思考すべきは佐々木の未来

 たしかに佐々木は日米問わずプロ5年目で、自立の時を迎えていてもいいのかもしれない。しかし、NPB時代に規定投球回を投げ込んだ歴がなく、怪我のリスクも高い投手が容易く生き残れるほど、メジャーリーグという環境は甘くない。

 ドジャースは佐々木を「20球団以上30球団未満」が絡んだ争奪戦を制して手中に収めた。それだけの労力をかけたからこそ、「過保護」や「戦力化できてない」と揶揄されようとも、少しでもマイナスになる可能性になり得る選択はしない。今回の無期限の負傷者リスト入りなどの措置にも、「佐々木を絶対に開花させる」というチームとしての覚悟がにじんでいる。その頑なさはロッテ首脳陣が見せてきたのと同様ではないだろうか。

 特大のポテンシャルを秘める佐々木の投球をこの先も見続けたいというのは、野球ファンや関係者が共通で抱える思いなはず。だからこそ、新たな環境で発展途上の最中にある状態で負荷をかけるより、来年、もしくは5年後と先を見据えて思考していくべきである。

 前途多難な佐々木の現状を批判するのは簡単だ。それでもいつか来るであろうメジャーリーグでの開花の時に向け、今はグッとこらえて、輝かしい未来に思いを巡らせるほうが得策ではないだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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