明治杯全日本選抜レスリング選手権(19~22日、東京体育館)のグレコローマン72キロ級で、新潟市出身の本名一晟(育英大4…
明治杯全日本選抜レスリング選手権(19~22日、東京体育館)のグレコローマン72キロ級で、新潟市出身の本名一晟(育英大4年)が初優勝を狙う。昨年の全日本選手権同級を初制覇しており、今回優勝すれば世界選手権(9月13~21日、クロアチア)の初代表が決まる。本格的に競技に取り組むのは大学までと決めていて、卒業後は新潟で高校教員になることを希望。有終の美を飾って指導者の道に進むため、ハードルを越える。
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ときおり笑顔をのぞかせながら、本名はパワフルな動きでスパーリングをする。たびたびグレコ特有の豪快な投げを披露。5月26日から北越高で教育実習中。13日まで保健体育を担当しながらレスリング部のコーチを務める。全日本王者の一挙手一投足に、部員たちも視線を送る。
一方で「(教育実習の)指導案を作成するのが大変」と苦笑い。サッカー、ラグビー、バレーボールなどルールから学んで実習に臨む。新潟市内の実家に帰宅後はすぐにパソコンと向き合う。その中でも全日本選抜への準備は怠らない。3月のアジア選手権(トルクメニスタン)で3位と勢いがある。毎日の筋トレに加え、昨年の全日本選抜グレコローマン77キロ級で優勝した同校の島袋慶生コーチ(28)とスパーリング。「筋力は落とさないように」と地力はキープしている。
「世界選手権出場が最大の目標」と言う。昨年の全日本選手権で初優勝し、代表権獲得のアドバンテージを得た。全日本選抜で優勝すれば即決定になる。敗れたとしても全日本選抜の覇者とのプレーオフで勝てば決まる。「もちろん一発で決める」と口調を強めた。
卒業後は新潟で高校教員として指導者になることを希望。「本格的に取り組むのは大学までのつもり」と今季が選手生活の集大成と位置付けている。巻西中を卒業後に進学した韮崎工(山梨)ではなく、北越を教育実習先に選んだのもそのため。父栄仁さん(49)が主宰する巻っずレスリングクラブで3歳から競技を始めた。その後、現在の育英大(群馬)まで、県外のレスリングに特化した環境で磨いた実力を、新潟に還元したいという思いがある。
県出身者として、昨年は97年に日体大4年だった栄仁さん以来、27年ぶりにインカレを制した。全日本選手権制覇も00年のフリー58キロ級の関川博紀さん(現八海監督)以来、24年ぶり。今年世界選手権に出場すれば、07年のフリー74キロ級の萱森浩輝さん(当時新潟県央工教員)以来18年ぶりになる。「また歴史を塗り替えて新潟を盛り上げたい」。笑顔の奥に決意をにじませた。【斎藤慎一郎】
◆本名一晟(ほんな・いっせい)2003年(平15)10月14日生まれ、新潟市出身。レスリングは3歳から巻っずレスリングクラブで始める。巻西中では柔道部に所属しながら競技を続け韮崎工(山梨)に進学。3年時に全国高校グレコローマン選手権65キロ級2位。育英大ではインカレで23年準優勝、24年優勝、23年のU20アジア選手権出場。172センチ。
○…本名の存在は北越の現役部員に刺激を与えている。71キロ級の宮山俊介主将(3年)は「タックルしたときの頭の位置などアドバイスしてもらった」。技以外にも育英大で行っているトレーニングを取り入れたりと、練習全体の材料を提供された。宮山主将は「国スポの予選など、残りの大会に生かしたい」と話した。