<大相撲夏場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館初の綱とりに挑む大関大の里(24=二所ノ関)が、進化を見せて11連勝を飾った。取組前まで2敗の小結若隆景に大苦戦。初優勝をつかんだ右差し、2度目の優勝をたぐり寄せた左おっつけという、従来の…

<大相撲夏場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館

初の綱とりに挑む大関大の里(24=二所ノ関)が、進化を見せて11連勝を飾った。取組前まで2敗の小結若隆景に大苦戦。初優勝をつかんだ右差し、2度目の優勝をたぐり寄せた左おっつけという、従来の2つの得意な形を封じられた。それでも今場所前に身につけた“第3の武器”右上手が逆転に導き、寄り倒して無敗を守った。2敗で追うのは横綱豊昇龍1人だけとなり、13日目にも4度目の優勝、事実上の横綱昇進を決める可能性が出てきた。

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今場所前に身に付けたばかりの“第3の武器”が、土壇場で大きな白星を呼び込んだ。右を差せず、左もおっつけられず…。大の里は苦しい体勢に追い込まれた。さらに相撲巧者の若隆景にもろ差しを許した。先場所までなら“万事休す”だった。だが肩越しに右上手を引くと、幕内最重量191キロの体を生かし、44キロ軽い相手に圧力をかけた。相手に下手投げを打たれても命綱の右上手は離さず、体を預けて寄り倒した。

「集中して取れた。危なかったけど、流れでいけたと思う」。取組前までの対戦成績は2勝2敗という難敵を退け、重圧から解放されてホッとした表情で話した。負けていれば豊昇龍、若隆景と1差となり、途端に優勝争いは混迷。それが取組前まで4人いた2敗が1人となり、一気に13日目優勝の可能性が出てきた。

大一番を制した右上手は今月6日、茨城・阿見町の部屋での稽古で手応えをつかんだばかりだった。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と半年ぶりに行った、連続10番の三番稽古。右四つの自身とはけんか四つ、左四つの師匠に、なかなか差し手争いで勝てなかった。だが右差しにこだわらず、右上手を引いて寄り立てる相撲に変更して8勝2敗。それまで師匠との三番稽古は、ほぼ互角の勝敗だったが初めて圧倒した。

その日の稽古後、大の里は「自然と体が動いた。相手の動きを封じ込められるようになった」と、成長を口にしていた。きっかけは3度目の優勝を果たした、先場所千秋楽の優勝決定戦の高安戦。「右上手を取って、うまく攻められた。あれがだいぶ自信になった。1つの発見」。優勝のたびに新たな武器や気付きがあり、大事な綱とり場所で優勝争い独走へとつなげた。

この日の内容は「良くなかった」という。それでも勝たなければならないのが横綱の使命。「集中し直して頑張りたい」と、再び内容も求める決意だ。風格も十分。いよいよ4度目の優勝と横綱昇進が、現実味を帯びてきた。【高田文太】