◇米国男子◇トゥルーイスト選手権 3日目(10日)◇ザ・フィラデルフィア・クリケットクラブ (ペンシルベニア州)◇7119yd(パー70)昨年まで「ウェルズファーゴ選手権」として親しまれた大会は今年、金融サービスを担う米企業トゥルーイスト…

ザ・フィラデルフィア・クリケットクラブのクラブハウス。残念ながらクリケット場は現存しない

◇米国男子◇トゥルーイスト選手権 3日目(10日)◇ザ・フィラデルフィア・クリケットクラブ (ペンシルベニア州)◇7119yd(パー70)

昨年まで「ウェルズファーゴ選手権」として親しまれた大会は今年、金融サービスを担う米企業トゥルーイスト・フィナンシャルをタイトルスポンサーに迎えてリニューアルされた。会場は例年、同社の本拠地ノースカロライナ州シャーロットのクエイルホロークラブだったが、今年は同クラブで次週のメジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」が行われるため、ペンシルベニア州に舞台を移して開催されている。

フィラデルフィア空港から直線距離で30kmほど北に位置するザ・フィラデルフィア・クリケットクラブは、その名の通りゴルフではなくクリケットから始まったクラブ。羊飼いの遊びが起源だというクリケットは16世紀の英国(イングランド)で競技として本格化し、18世紀以降は帝国の拡大に伴い植民地で広まった。

米国では1754年にベンジャミン・フランクリンがイングランドから公式ルールブックを取り寄せ、1849年には大統領就任前のエイブラハム・リンカーンが試合を観戦。南北戦争以前から、ニューイングランド地方を中心とした北東部ではクリケットが盛んに行われ、フィラデルフィアにも移民コミュニティが集まるクラブが多く作られた。

クリケット場だったころはどんなところだったんだろう…

1854年に設立されたザ・フィラデルフィア・クリケットクラブはまさにその象徴的存在。ペンシルベニア大でクリケットを楽しんでいた在学生たちによって作られ、スポーツを介した“クラブ”としては米国で最古とされる。しかしその後、メンバーたちは19世紀末に流行し始めたゴルフに夢中になり、1895年に最初の9ホールが完成。1907年、10年には18ホールのセントマーティンズコースで「全米オープン」をホストし、1920年に今大会の会場であるウィサヒコンコースができた。

ちなみに、2013年の全米オープン会場になったメリオンゴルフクラブ(2030年大会の会場でもある)も、もともとはメリオンクリケットクラブとして1865年にスタート。ゴルフは1896年からプレーされるようになり、人気が爆発したことで1912年に東コース、1914年に西コースを開場した。

ゴルフブームの到来はもとより、米国では野球やアメリカンフットボールがメジャースポーツとなったことでクリケットは徐々に衰退した。しかし、2023年には6チームが参加するプロリーグ、メジャーリーグクリケットが発足。2028年の「ロサンゼルス五輪」では128年ぶりに競技として復活する。スポーツ大国で再び日の目を見るときが来るかもしれない。(ペンシルベニア州フロータウン/桂川洋一)