この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。その…
この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。そのルールの内容と、それに対して、どう対応、さらには、どう適応していくべきなのか、サッカージャーナリスト大住良之が徹底検証する!
■驚きの「トライアル」の結果
「トライアル」の結果は、驚くべきものだった。マルタでは179試合、イングランドでは160試合、そしてイタリアでは80試合、合計419試合のトライアルが行われたが、GKがボールを8秒以上保持して罰則を受けたのはわずか4回(このほかに8秒以上保持しながら罰則を受けなかったことが1回あった)で、いずれも試合の終盤の出来事だった。
「罰則」はほとんどのトライアル試合で「コーナーキック(以降、CK)」が設定されていた。スローインではあまりに「罰則」の度合いが低く、CKのほうがよりGKに与える影響力が強いと判断されたからである。第12条の新しい条文でも明らかなように、今年のルール改正でも、罰則はCKとなった。
トライアルを実施した協会からは、IFABに対して詳細なフィードバックが送られたが、結果は非常にポジティブだったという。当然のことながら、GKの一部はあまり好意的ではなかったが、プレーヤー、監督・コーチ、レフェリー、そして役員など試合にかかわった人のうち、実に63.7%が新ルールは試合に良い影響を与えたと回答したという。さらに「ゲームが速くなった」と答えた人は72.5%にも及んだ。
■「役に立った」カウントダウン
「8秒間」をGKに分からせるため、主審はGKがボールを手や腕で保持したと判断したときから「カウントダウン」を始める。そして5秒前になると片方の手を頭上に挙げ、5本の指を開いて「残り5秒」を示し、そこから指を1本ずつ折りながら示すのである。
この主審のカウントダウンも、87.6%が「役に立った」と回答している。主審がこのように明確に示すことで、ボールを受けるために動かなければならないフィールドプレーヤーにも役立つとIFABは説明している。
通常、IFABでは新ルール導入までに2年間(2シーズン)のトライアルを実施する。しかし今回は、1年間のトライアルで非常にポジティブな結果を得たため、「ルール改正を遅らせる理由はない」と判断したという。
では、GKがボールを保持しているというのは、具体的にどのような状態を意味しているのだろうか。この記事の冒頭に示した「サッカー競技規則2025/26版(大住試訳)」の第12条3項本文に続いて、以下のような文言があり、かなり明確に規定されている。
■GKにとって「待ったなし」
「ゴールキーパーが手や腕でボールをコントロールしていると判断されるのは、下記のようなときである」
〇ボールが手や腕で挟まれている。あるいは手や腕と何らかの表面(地面や自分の体)で挟まれている
〇腕を伸ばした状態で、手のひらでボールを保持している
〇地面にバウンドさせる、あるいは空中に投げ上げる
レフェリーはGKが倒れたままでもカウントダウンを始めることができるし、片腕を挙げての最後のカウントダウンも、GKが立ち上がるのを待つ必要はない。8秒間は「待ったなし」なのである。
「8秒ルール」は、間違いなく「サッカーの景色」を変える。