「大相撲初場所・10日目」(21日、両国国技館) 平幕の王鵬が玉鷲を寄り切り、勝ち越しを決めた。2敗で優勝争いのトップを1差で追走。昭和の大横綱、大鵬を祖父にもつ24歳は来場所の新三役、今場所の賜杯への意欲を隠さなかった。平幕金峰山は小結…
「大相撲初場所・10日目」(21日、両国国技館)
平幕の王鵬が玉鷲を寄り切り、勝ち越しを決めた。2敗で優勝争いのトップを1差で追走。昭和の大横綱、大鵬を祖父にもつ24歳は来場所の新三役、今場所の賜杯への意欲を隠さなかった。平幕金峰山は小結阿炎に突き落とされて初黒星を喫したが、1敗だった千代翔馬が敗れ、単独トップは変わらず。2敗は尊富士を加えた3人。大栄翔を退けて連敗を2で止めた綱とりの大関豊昇龍、5連勝と調子を上げてきた大関大の里、7連勝の霧島が3敗で続く。
土俵から降りた王鵬は右目付近の傷口の血を拭った。勝ち越しを決め「いい相撲が取れている証拠。積み重ねたことが出せている」と語った。1差で追う優勝、来場所の新三役を「毎場所狙っていますよ」とサラリと言ってのけた。
立ち合いから玉鷲と強烈に突き合い、左を差すと右もまわしを取って、土俵中央から走るように寄り切った。相手の額、突きが右目付近に幾度も当たった。昨年の名古屋場所7日目に阿炎の頭部が右目付近に当たり、皆勤後に眼窩(がんか)底骨折と診断され、手術を受けた。今も生傷が絶えない箇所だ。
師匠の大嶽親方(元十両大竜)は当時を「自分で傷口をたたいて『大丈夫です』『痛くない』と言う。我慢したのか、休場したくなかったのか」と述懐。その場所から相撲内容も変わった。引いたり、抱える悪癖が消え、突き押しに徹するようになった。関取の友人をつくらず一人が多いものの、部屋の若い衆に声をかけるようにもなった。
師匠は「喜怒哀楽は出さないが、上がろうという意識が出たのだろう」と察した。八角理事長(元横綱北勝海)は「強くなっている。突っ張ってからまわしを取ると安定感がある」と評価した。
役力士との対戦は終えている。祖父で優勝32回を誇る横綱大鵬は『忍』を座右の銘とし「夢」を追った。その二文字を受け継ぐ覚醒の時を迎えようとしている。