野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りを発表し、競技者表彰のエキスパート表彰として阪神で3度の本塁打王に輝き、「ミスタータイガース」として愛された掛布雅之氏(69)を選出した。以下、掛布氏のスピーチと一問一答。 ◇ ◇…
野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りを発表し、競技者表彰のエキスパート表彰として阪神で3度の本塁打王に輝き、「ミスタータイガース」として愛された掛布雅之氏(69)を選出した。以下、掛布氏のスピーチと一問一答。
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【スピーチ全文】
「こんにちは、掛布です。野球というスポーツは、1人でできるスポーツではありません。15年間、タイガースで野球をやらせていただき、素晴らしいチームメートに恵まれ、球団のサポートがあり、また野球ファンの温かい声援があったからこそ、いまここに立っていられるんだと思います。
野球を始めた大きなキッカケというのが、王さん、そして長嶋さんに憧れて千葉の田舎で育った僕が、オヤジと二人三脚でバットを振り続け、テストを受けて阪神に入団させていただきました。昭和60年。王監督、4番は原さんでした。その巨人を倒し、日本一も経験させていただきました。すごくいい思い出です。
その私がここに立って、殿堂入りを選ばれた時に何を感じたか。イチローさんも先ほど、言われましたが、明日は阪神淡路大震災の30年目を迎えます。能登半島沖地震から1年がたちますが、苦しんでいる方が大勢おられると聞いております。この殿堂入りのメッセージというのは、そういう子供達を笑顔にする、また街を笑顔にするような活動をもっともっとやっていきなさい、というメッセージを届けるべきだと言っているように感じております。その気持ちを大切に、新しい第一歩を踏み出していきたいと思いますのでよろしくお願いします。本日は本当にありがとうございます」
【記者会見で】
-藤川阪神への期待。
「球団が90周年を迎えます。昨年、巨人が90周年で阿部監督の下、優勝しています。藤川監督も『勝てる戦力を持っています。あとは私がやらないといけない仕事をキチッとできれば勝てる』と言っておりました。阪神ファンが一番喜ぶのは優勝、日本一だと思います。それに向かってもうすぐキャンプがスタートします。藤川監督の頭の中にはある程度、シミュレーションができているのではないでしょうか。本当に期待しています」
-通知式では王氏、イチロー氏と会話した。
「同じ打者としてイチローさん、王さんと肩を並べる形で殿堂入りできたというのはすごくうれしい。自分がやってきた野球というものにウソがなかったと。野球というスポーツを選んでよかったなと。こういう道に進む環境をつくってくれた、オヤジを含めた家族に感謝しております」
-現役生活で一番、思い出に残ってる試合は。
「3連発だと思うかも知れませんが、僕は入団して4年目の開幕戦です。ヤクルト戦で松岡さんから打った1打席目の満塁ホームラン。入団3年目で打率3割をクリアして、僕の取り巻く環境が全く変わったんです。初めて野球の怖さみたいなものを感じはじめました。4年目のシーズンを迎えた時、その1打席目でまだ覚えています。2ー2の並行カウントで松岡さんの内寄りの直球をライトスタンドに打った満塁ホームラン。これが僕のプロ野球人として意識した最初のホームランなのかもしれません」
-昨今は投高打低。今の野手にメッセージを。
「僕らの時代の打者と今の時代の打者、どちらがすごいかといえば、今の方が当然すごいと思います。いろいろ技術も含めて。今、投高打低と言われるのは多分、ボールの影響もあるんじゃないかなと思ってるんです。抜けそうな打球が抜けなかったり、内野を抜く打球速度が遅かったり、ホームランが非常に少なかったというのは、オリンピック種目というものを考えていた中で、野球の試合時間というものを非常に考えたデータというものを、そのボールを変えるような形の中で取っているんじゃないかと言われた方がいたんです。ですから大体、3時間以内で試合が収まることが非常に多いっていうのは、そういう何かが動いていますね」
(続けて)
「ただ、一野球ファンとすると、やっぱり7点ぐらいの勝負を見た方が、お客さんは球場で熱く野球を見ることができる。もう少し打者に対して有利にしろとは言いませんが、選手が変わるのではなく環境を変えてあげて、野球を変えていく。連盟の方たちが考えて取り組んでいくべきじゃないかなと。もう少しお客さんが喜ぶような野球ができるような、ストライクゾーンだとかボールだとかいろんなものを、考えるべきなんじゃないかなと僕は思います」