◆明治安田J1リーグ▽第37節 町田1―0京都(30日・Gスタ) 町田は京都に1―0で競り勝ち、J1初昇格初優勝の可能性を最終節までつないだ。後半22分、元日本代表MF相馬勇紀が左サイドで仕掛けると、これがオウンゴールを誘発。この1点を守り…
◆明治安田J1リーグ▽第37節 町田1―0京都(30日・Gスタ)
町田は京都に1―0で競り勝ち、J1初昇格初優勝の可能性を最終節までつないだ。後半22分、元日本代表MF相馬勇紀が左サイドで仕掛けると、これがオウンゴールを誘発。この1点を守り切り、2連勝で勝ち点を66まで伸ばし、この日引き分けた首位・神戸と勝ち点差3で最終節の鹿島戦(8日・カシマ)を迎えることになった。黒田剛監督は「本来の町田、失点を0に抑えて1、2点を取って勝つというサッカーを志向してくれた」と選手たちをたたえた。
結果でも話題でも今季J1の中心だった町田だったが、9月途中から5戦勝ちなしと失速。計9失点と堅守が揺らぎ、5月から守り続けてきた首位から陥落した。しかし前節のFC東京戦で3バックに変更し、3―0と快勝。この日も2試合連続完封で、優勝の可能性を残したまま最終節までこぎ着けた。
復調へのキーポイントは2つ。ひとつは根幹と言える守備面の整備だ。勝利から遠ざかった間は「自分たちで招いているものが多く、我々のコンセプトがかなり散漫になったり、ベースから逸脱したプレーがかなり横行していた。そこを整理し、ギャンブルのリスクを負うことなく、しっかりと0に抑えていくこと」と黒田剛監督。3バックで中央の守備を安定させ、リスクを最小限に抑えていく守り方を再確認し、ゴール前での粘り強さも取り戻した。
前半アディショナルタイムには、京都のエースFWエリアスに左サイドを抜け出されて決定的なピンチを迎えた。それでもカバーに戻ったDF昌子源が「(エリアスは)わかっていても止められない左足の形を持った選手。でも左で打たせなければ、何とかなるかもしれない」と普段よりスライディングのタイミングを早め、左足の前に体を投げ出してコースをふさいだ。そして切り返しを誘発し、キャプテンがわずかに作った時間に他選手も戻り、最後は京都FW豊川のシュートコースも限定してGK谷が抑えた。
もう一つのキーポイントは、相馬勇紀が本来のキレを取り戻したことに尽きる。昨季はポルトガル1部のカザピアで32試合5得点と結果を残してきたアタッカーだが、町田加入後は負傷の影響もあって調子が上がらず。しかし前節のFC東京戦でCKからの直接ゴールで移籍後初得点を挙げると、この日もチャンスを量産。得点シーンでは左サイドでボールを持つと、右アウトサイドでの小さなタッチでわずかに右に持ち出し、相手DFの逆をついて一気に縦へ。「相手がわざと止まんなきゃいけない位置に優しいタッチを入れて。あそこが決め手だったかなと思います。すごくいい感じで、できました」という絶妙の緩急で抜き去り、ゴールを呼んだ。相手DFと1対1になれば、高い確率でクロス、またはシュートまで持ち込むほどの突破力を誇る相馬の存在が、町田の攻撃に迫力を加え始めている。
さらに後半33分には右膝の負傷で9月半ばより戦列を離れていたしていた元日本代表DF中山雄太も途中出場で復帰。この日は左ウィングバックで試合のクローズに貢献した。3バック、ボランチも含め複数ポジションをこなす中山、さらに同じく負傷離脱していたMF荒木とポリバレントな特徴を持つふたりが戻り、試合展開に合わせて戦う駒もそろった。それでも首位神戸との勝ち点差は3と、優勝には他力が必要。「いろいろと上向きな要素が最終節を前に出てきているので、うまくいかなくてもしっかり守り切る堅さを3バックや(GK谷)晃生中心に発揮できている。しっかりとこの一週間、準備していきたい」と昌子。一度は手放した“流れ”を、もう一度つかんで迎える最終節。奇跡の再逆転優勝を信じて、アウェーの鹿島戦へと乗り込む。