(23日、明治神宮野球大会・高校の部準決勝 横浜3―1東洋大姫路=延長十一回タイブレーク) そのとき、神宮にいる1万5千人以上がどよめいた。唯一、横浜の選手たちをのぞいて。 1―1で迎えた延長十回裏1死満塁、横浜が迎えたサヨナラのピンチだっ…
(23日、明治神宮野球大会・高校の部準決勝 横浜3―1東洋大姫路=延長十一回タイブレーク)
そのとき、神宮にいる1万5千人以上がどよめいた。唯一、横浜の選手たちをのぞいて。
1―1で迎えた延長十回裏1死満塁、横浜が迎えたサヨナラのピンチだった。表の攻撃が無得点に終わって嫌な流れの中、村田浩明監督は腹をくくって指示を出した。
「内野5人シフト」だ。
「100回に1回、千回に1回とか(の作戦)。負けたら自分の責任」
左翼のスペースをがら空きにした。打球が飛べばサヨナラ負けは必至。代わりに、途中交代で入った内野手を二塁上に配置。ほかの内野手4人は前進守備を敷いた。八回に同点スクイズを決められた9番打者に対して、なんとしても同じ手は食わないとプレッシャーをかけた。その上で、打球によっては併殺を奪う構えだった。
この大胆なシフトに、エース左腕奥村頼人は「驚きはない」と冷静だった。普段からこのシフトの練習を重ね、練習試合でピンチを乗り切った成功体験もあったからだ。
打ってきた右打者に対し直球勝負を挑み、最後は144キロの速球で空振り三振。「奥村の球威なら(左翼に)引っ張れない」という村田監督の期待を込めた賭けに、エースは最高の結果で応えた。次の打者も二ゴロに仕留めてピンチを切り抜け、直後の攻撃で2点を勝ち越した。
近畿王者の東洋大姫路を驚かす、周到な準備に裏打ちされた積極策だった。全国で抜きんでたチームになるという思いを込めて「横浜1強」の合言葉を掲げたチームは、筒香嘉智(DeNA)を擁した2007年以来の決勝に進む。(大宮慎次朗)