この秋、アジアのゴルフ界に新しい星が輝いた。台湾のユ・チュンアン(ケビン・ユ)、中国のウェニー・ディン、そして日本の大西魁斗という若い才能が、世界中から米国につながるルートを示した。PGAツアーのChuah Choo Chiang氏がコラ…

大西魁斗は下部コーンフェリーツアーからPGAツアーのカードをつかんだ(Getty Images)

この秋、アジアのゴルフ界に新しい星が輝いた。台湾のユ・チュンアン(ケビン・ユ)、中国のウェニー・ディン、そして日本の大西魁斗という若い才能が、世界中から米国につながるルートを示した。PGAツアーのChuah Choo Chiang氏がコラムで3人を紹介する。

■ユ・チュンアン

ユ・チュンアンは10月にPGAツアー初優勝をマークした(Getty Images)

国際的な広がりを見せているゴルフの世界で、アジアはいま最もゴルフ人口が多い地域だと言える。R&Aの最新データによると、その数は2620万人。同団体の加盟地域の中では米国や欧州よりも多い。近年、PGAツアーが主導する様々な施策も、アジアの若きスター候補を見出すという成果をあげ始めている。

ユ・チュンアンは10月「サンダーソンファームズ選手権」で、「PGAツアーユニバーシティ」プログラムの卒業生として初めて優勝した。26歳の彼はアリゾナ州立大でアマチュアとして活躍し、2021年にPGAツアーユニバーシティを4位で終え、米下部コーンフェリーツアーに参戦。22年にポイントランキング20位に入りPGAツアーに昇格した。

ゴルフ練習場のティーチングプロである父にゴルフを教わったユは、2014年「アジア大会」団体戦で16歳にして金メダルを獲得した。チームメートで親友になったパン・チェンツェンから米国の大学に進学するよう勧められて渡米。アリゾナ州立大でプレーした。

「PGAツアーユニバーシティのプログラムはコーンフェリーツアー、PGAツアーへの道筋をはっきり示してくれた。素晴らしいチャンスで、優秀な選手はよりスムーズにトップツアーでプレーできる」。彼は陳志忠、パンに続いてPGAツアーで優勝した3人目の台湾出身ゴルファーになった。

■ウェニー・ディン

御殿場でのアジアパシフィックアマを制したウェニー・ディン(Getty Images)

一般的に米国の大学にトップアマチュアが集まっていることから、PGAツアーは今年、DPワールドツアー、R&Aとともに、PGAツアーユニバーシティの制度と並行して「グローバルアマチュアパスウェイ」(GAP)を立ち上げた。米国の大学チームでプレーしていないトップランクのアマチュアにDPワールドツアーカードを付与する制度だ。

ディンは10月に日本で行われた「アジアパシフィックアマチュア選手権」で優勝したことでGAP 1位の地位をさらに固め、このレースの最初の頂点に立った。ちなみに、ユがミシシッピ州でのサンダーソンファームズ選手権を制した日と同じ日曜日のことだった。

早くも将来のメジャーチャンピオンの呼び声も高いディンには来季以降の米国挑戦も期待される。DPワールドツアーのシーズントップ10(レース・トゥ・ドバイ)に入れば、翌年のPGAツアー出場権が付与される。彼は早期のプロ転向を決め、アジアパシフィックアマで獲得した来年の「マスターズ」出場権を放棄。プロとしてメジャーを目指す考えを示した。

22年に「全米ジュニアアマチュア」で優勝、世界アマチュアランキングで3位にまで上り詰めたディンは、昨年秋にアリゾナ州立大に入学。54ホールの大会で通算27アンダー「189」のNCAAスコア記録をマークし、PGAツアーユニバーシティの制度を利用すると見られていたが、その後は大学でプレーせず、新設のGAPを通じてプロに転向することを選択した。

地元・中国開催の欧州下部チャレンジツアー「杭州オープン」でプロデビューし、11位でフィニッシュしたディンは、「グローバルアマチュアパスウェイは最高の機会を与えてくれました」と語った。「(マスターズ、全英オープンのアマチュア出場資格を放棄するのは)難しい選択でしたが、家族と相談して、これが正しい決断だったと信じています」

■大西魁斗

2年目の米下部コーンフェリーツアーで初優勝(Grant Halverson Getty Images)

そして大西海斗は同じ10月6日、米国下部コーンフェリーツアーのシーズンランキングでトップ30を確保し、来季のPGAツアーカードを獲得した。これでツアー10勝の松山英樹や、今季のルーキー・久常涼がプレーするエリートフィールドに加われる。

9歳で移り住んだロサンゼルスをはじめ、少年時代を米国で過ごした。PGAツアー3勝の丸山茂樹は彼にとって長年のアイドル。コーンフェリーツアーでの厳しい戦いを通じて、大西はたくましくなった。

参戦初年度の2023年はポイントランキング100位。101位の選手とは0.49ポイント差で限定的な出場資格をなんとか維持し、24年も同ツアーのメンバーとして戦った。2月の「アスタラ選手権」でトップ10入り(8位)したことで可能性をひろげ、6月の「UNCヘルス選手権」で初優勝を飾った。この秋にPGAツアーカードを手にして「夢がかなった」大西は、直後に両親と丸山に電話をして涙を流した。

アマチュアとプロとをつなぐ循環が活発なゴルフ界。PGAツアーを目指す選手たちにとっては、様々なルートで今後さらに多くの夢が実現するはずだ。