茨城ロボッツが参戦するバスケットボールBリーグ1部(B1)の2024~25シーズンが10月、開幕する。7月に運営会社の新社長に昇格し、初のシーズンを迎える川崎篤之さん(46)に意気込みを聞いた。 ――昨季は12勝48敗。東地区の最下位で、…

 茨城ロボッツが参戦するバスケットボールBリーグ1部(B1)の2024~25シーズンが10月、開幕する。7月に運営会社の新社長に昇格し、初のシーズンを迎える川崎篤之さん(46)に意気込みを聞いた。

 ――昨季は12勝48敗。東地区の最下位で、B1全体では24チーム中22位。かろうじてB2降格(23、24位)を免れた

 「開幕前から主力選手のけがが相次ぐなど、不確定要素によってコントロールできない状況に陥った。全力を尽くしても思い通りにならないスポーツの難しさ、スポーツビジネスの奥深さを痛感しました」

 「一方で最終戦まであきらめずに粘り、B1に踏みとどまった。負けが込んでもホームでの1試合平均入場者数4千人超えを達成。ロボッツが茨城、水戸に定着したと実感した。B1とB2ではビジネス面も差が出る。このあきらめない粘りは大きな財産です」

 ――1試合平均入場者数4千人以上と年間売上高12億円以上をクリアし、26年からの新たな最上位リーグ「Bプレミア」参入に前進した

 「残るハードルは、VIPルーム新設など本拠地アダストリアみとアリーナの改修です。概算の全体事業費は計5億~6億円と、施設所有者の水戸市が公表している。市、市議会、市民のご理解を得て、私たちも民間での財源拡大に努力を続ける。すでに1億5千万円以上を集めており、最低でも3億円超えをめざす」

 ――残された課題は他にも?

 「練習環境の整備は課題です。昨季の主力選手が他クラブへ移籍してしまった。『より自分が活躍できる環境に行きたい』と厳しい言葉を突きつけられた。Bプレミアではドラフトも始まる。人、物、金が集まる環境をしっかり磨かねばならない」

 ――水戸を中心とした商圏人口では観客増や売り上げ増は難しいのでは

 「集客の厳しさは織り込み済みです。県内の多くの自治体と連携協定を結び、県内企業に広くスポンサーとなってもらうべく働きかけています」

 「創業の地が茨城、経営者が茨城出身、工場が茨城に進出といった、つながりを大切にして東京の企業へもアプローチする。茨城への進出企業は、茨城への地域貢献を考える。あまたある地域貢献の中から、『ロボッツを応援しています』が進出企業のステータスになるような、投資先として選ばれる存在になりたい。そのための関係性や必然性、ストーリー性を構築していく」

 ――今シーズンは期待していいでしょうか

 「チームの編成や育成、ゲームの戦略や戦術は新任の落慶久ゼネラルマネジャーやクリス・ホルム新ヘッドコーチが担ってくれています。そのもとで新戦力である身長210センチのサンシャオ選手、長谷川暢(のぼる)選手、駒沢颯(はやて)選手、遠藤善(ぜん)選手らの活躍に期待してほしい」

 ――ご自身の、前社長や元社長との違いや強みは

 「西村大介・前社長も山谷拓志・元社長も一流のアスリートだった人。実は2人は1997年のアメリカンフットボール日本選手権ライスボウルで西村氏が京都大、山谷氏がリクルートの選手として相まみえています。かたや私は中学高校の部活すらほとんどやっていない。スポーツビジネスの世界に身を投じておきながら、スポーツ経験が無いのはコンプレックス。これは本音です」

 「部活の代わりに小中高とボーイスカウト活動に取り組んだ。世界中の同世代とつながり、視野を広げた。自分で発想、企画、準備、実行、反省、反映するという物事や組織の動かし方の基本を少年期から身に付けたことは、いまに生きているかも」

 「京都での学生時代、立命館大学の先輩でのちに立憲民主党代表となる泉健太氏の口車に乗せられ、選挙の法定ビラ配りをきっかけに政治の世界に足を踏み入れました。2009年の政権交代を挟む10年ほどの間、政治の現場を体験した。『世の中って動かせるんだ』と皮膚感覚で感じ取った。この現場体験は生かせると思う」

 ――めざすところは

 「私は前社長や元社長と違い、茨城生まれの茨城育ちです。ふるさと愛。これが何よりの強み。茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントは文字どおりバスケットボールだけではない。子どもたちの記憶に残る楽しく魅力的なまちをつくるために、ロボッツはあるのだと思っています。私が子どもだったころの水戸のまちがそうだったように」

 「それを実現すべく『ロボッツと組めば何かできる、動かせる』と思っていただけるよう、県内外の企業団体を駆け回る。ロボッツが地域経済のプラットフォームそのものになることをめざします」

 「2014年に前身のクラブが経営破綻(はたん)して10年。クラブは生まれ変わり、B1参入を果たし、Bプレミアへの筋道を先達がつけてくださった。起承転結でいえば、元社長が起、前社長が承、私たちの時代は転。『ロボッツはあきらめない』という当初からのスピリッツはもとより、守るべきは守る。一方で、新たな価値観を生み出すために転じるべきは転じる。良い方向に転じるか、それとも、すっ転ぶか? 勝負どころです」(中村幸基)

     ◇

 川崎 篤之(かわさき・あつし) 1978年、茨城県ひたちなか市(旧勝田市)出身。県立水戸第一高校、立命館大学法学部卒業。2001年、民主党参院議員の松井孝治氏(現京都市長)の事務所入所。03年、水戸市議選に25歳で初当選し2期約8年務める。11年、同市長選に立候補し新顔4人による選挙戦で高橋靖氏(現市長)に敗れる。12年、現ロボッツオーナーである堀義人氏主宰の「グロービス」入社。20年、運営会社の茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント執行役員。23年、取締役。24年7月、社長就任。