(26日、第106回全国高校野球選手権愛媛大会準々決勝 済美3―2松山北) 同点の六回、この回からショートの守備で出場した松山北の背番号14、渡辺皓仁(ひろと)選手(3年)は、一、二塁間に挟んだ走者の背中に飛びついてタッチアウトにした。胸か…

(26日、第106回全国高校野球選手権愛媛大会準々決勝 済美3―2松山北)

 同点の六回、この回からショートの守備で出場した松山北の背番号14、渡辺皓仁(ひろと)選手(3年)は、一、二塁間に挟んだ走者の背中に飛びついてタッチアウトにした。胸から下が真っ黒になったユニホームで笑顔を見せた。

 1点リードされた八回に打順が近づいてきた。「ファウルを打って、相手投手を疲れさせるのが最低条件」と心に誓った。

 昨冬からファウルを打つ練習を続けてきた。相手投手に球数を投げさせたり、四球で出塁したりするためだ。

 「自分が何をすればチームの役に立てるか考え、それが一番チームのためにもなるし、自分に向いていると思った」

 普通よりミートポイントを3球分ほど後ろに置いて、手首を返さない。練習で他の選手がフリー打撃をしている間も、打撃ケージに入ってマシンを相手にファウルを打った。

 「1打席最低10球」投げさせることを目標に、練習を積み重ねて体にしみこませた。

 迎えた今大会、1回戦は守備だけの出場、2回戦は出場機会がなかった。

 チームが勝ち進んだ24日の3回戦、8番ショートで先発出場し、二回にこの夏、初打席を迎えた。フルカウントで三振したが、ファウルを2回打って相手投手に8球を投げさせた。

 次は1点リードされた四回、2死一、三塁の好機で打順が回ってきた。左打席に入り、ワンボール後の2球目を強振。打球は三塁線を破り、同点に追いつく適時二塁打となった。

 「引きつけて打つという意識が強くなっていたんで、それが技術として自分に身についていた」

 そして、この日の準々決勝。八回の打順は代打が告げられて交代した。

 試合後、「やり切った感じがまだ……もっと上に行けるチームだと思ってたんで。あとは1、2年生に託して、自分は受験勉強を頑張ろうと思います」。涙をこらえながら言った。(中川壮)