異国で、古巣と戦う。 そんな特殊な状況に、埼玉パナソニックワイルドナイツに在籍して3季目になるFWラクラン・ボーシェー(29)は、高揚感を隠さない。 「選手にとって、新たな経験ができるのは素晴らしいこと。さらに私は、以前所属していたチーム…
異国で、古巣と戦う。
そんな特殊な状況に、埼玉パナソニックワイルドナイツに在籍して3季目になるFWラクラン・ボーシェー(29)は、高揚感を隠さない。
「選手にとって、新たな経験ができるのは素晴らしいこと。さらに私は、以前所属していたチームと戦える。とても興奮しています」
今季新設された「クロスボーダーラグビー」。昨季のリーグワン4強と南半球のスーパーラグビー(SR)チームとが対戦する大会だ。ワイルドナイツは2月4日、本拠の熊谷ラグビー場でニュージーランド(NZ)のチーフスを迎え撃つ。
NZ出身のボーシェーは、2016年シーズンから、21年シーズンまでチーフスの一員だった。密集で相手の球を奪い取る「ジャッカル」の名手として知られ、いくつものピンチを救ってきた。
そのボーシェーは、チーフスを「情熱的なチーム」と表現する。NZ北島の都市ハミルトンが本拠。ファンの大歓声を受け、選手入場でスタジアムに飛び出していく瞬間の喜びは忘れられないという。
「ハードワークがチーフスのブランド。特に防御の場面で、その情熱が発揮される」。かつて日本代表のリーチ・マイケル(BL東京)や山下裕史(神戸)も在籍した。現在、東京SGでプレーするNZ代表主将のFWサム・ケインはチーフスの「顔」だ。黙々と体を張り続ける彼のスタイルが、そのチームカラーを如実に示している。
今回来日するチーフスには、ボーシェーの5歳下の弟ケイラムがいる。ポジションは同じFW後列。「彼は大きなハートを持っている。体のサイズは私と似ているけれど、ボールを持って突進するプレーは、彼の方が多いかな。口数は少ないが、一言で言えばいいやつだ」
もし兄弟が出場することになったら、公式戦での対戦は初めてになる。突破を図る弟をタックルし、得意のジャッカルを決められるか。「それは見てのお楽しみだね」。楽しそうに笑った。
クロスボーダーは、タイトルがかからない交流戦。試合結果がリーグワンの成績に反映されるわけでもない。NZ勢にとっては、SR開幕前の調整的な意味合いも強い。ワイルドナイツは2月半ばに東京SGとのビッグマッチを控え、ボーシェーも「タイミングとしては難しい。すべてが完璧とはいえない」と素直に認める。
「それでも、この状況を受け入れて、自分たちにフォーカスしていくだけ」。チーフス戦の前まで、ワイルドナイツは6戦負けなし。海外の強豪との競り合いは、チームをより成長させる好機にもなり得る。
「日本ラグビーの立ち位置を世界に示すいいチャンスだし、NZの選手にとっても異国を知る機会になる。両国のラグビーに新たなつながりが生まれたらいい」とボーシェー。特別な一戦を楽しみにしている。(野村周平)