無敗の格闘家で今年4月にプロボクシングで白星デビューを飾った東洋太平洋スーパーバンタム級8位の那須川天心(25=帝拳)が18日、東京・有明アリーナでメキシコ・バンタム級王者ルイス・グスマン(27)との55・79キロ契約体重8回戦に臨む。デビューの6回戦(B級)から異例の“昇格”を果たし、8回戦(A級)で戦う。

ボクシング2戦目までの約5カ月間は「土台作り」の期間だった。所属ジムの本田明彦会長から「今はスタミナをつけるべき」と指示を受け、2回にわたる走りこみ合宿を敢行。ジムと契約を結ぶ中村正彦ストレングス&コンディショニングコーチが那須川のフィジカル面での急成長ぶりに目を見張った。

1回目は6月8日から1週間、千葉・成田で下半身強化を目的とした合宿に取り組んだ。格闘家時代は3ラウンドが基本。延長でも多くて4~5ラウンドとなるため、長く戦う下半身のスタミナは必要なかった。那須川にとって「格闘技人生初めて」という走りこみ合宿のため、常に最下位を走っていた。しかし約1カ月半後、那須川は「変身」していたという。

7月10日から1週間、再び千葉・成田で取り組んだ走りこみ合宿で、那須川は常にトップ集団にいた。中村コーチは「1回目で那須川選手の現状は分かっていましたので、2回目に見た時はちゃんと準備して整えてきたなと分かりましたね」と振り返る。現状を痛感したのは那須川自身も同じ。ひそかにロードワークなどでスタミナ強化は図ってきたことは間違いなかった。それが「ビリからトップへ」の急成長だった。

中村コーチは「8回戦のスパーリングするには、そのための練習スタミナも必要だった。1回目の走りこみ合宿後から週1回、私のパーソナルトレも受けるようになっていましたが、内容の90%はスタミナ強化メニューでした。若いから成長は本当に早い。私の目から見ても8回戦は十分に戦えるスタミナを持っています」と太鼓判を押した。

ジム所属選手では初めてとなる試合に向けた2連続走りこみ合宿を通じ、ボクサーとしてのスタミナ=土台ができ上がったと言っていい。18日の2戦目に向け、那須川は「この5カ月間でこんなに人って変われるんだ、成長するんだ、という姿をみせられたらうれしい」と何度も口にしてきた。下半身のスタミナが心の余裕を生み、パンチを繰り出す際、踏み込む強さも増している。「今回は殴りにいく」とKOへの意識を高める那須川は力強い姿に変貌しているに違いない。