◆大相撲 ▽春場所3日目(14日、大阪・エディオンアリーナ大阪)
大関・貴景勝の綱取りが消滅した。日本相撲協会に「左膝内側半月板損傷」との診断書を提出して休場。一人横綱の照ノ富士も初日から休場しており、横綱、大関陣の不在は昭和以降初の異常事態となった。師匠の常盤山親方(元小結・隆三杉)によると再出場せず、夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)は一転して6度目のカド番となる。
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相撲界で横綱というのは“神の領域”。その異様な空間を戦うには横綱の体が必要になってくる。6日目の御嶽海との一番を見て、貴景勝の左膝が悪いことは明白。休場も仕方ないと思った。問題は今後だ。貴景勝は強い精神力を持った力士である。私は必ず綱を張れる力士だと確信している。そのためには横綱の体をつくらないといけない。
名横綱と呼ばれた千代の富士さんは肩の脱臼癖を克服するため筋肉の鎧(よろい)を身につけた。白鵬さんは徹底的に基礎運動を繰り返して強い体幹と柔らかい肉体をつくった。貴景勝はまだ26歳。筋力をつけるなどの肉体改造で強い横綱を目指すと同時に、長く綱を張れる力士になってほしい。
綱取り場所からカド番へ。残酷のように思えるかもしれないが、天国から地獄は大相撲の世界では珍しいことではない。私も1980年、大関昇進のかかった名古屋場所で膝を痛めて番付を下げた。腐ることはまったくない。チャンスは十分にある。(尾車親方=元大関・琴風、スポーツ報知評論家)