◆大相撲 ▽春場所3日目(14日、大阪・エディオンアリーナ大阪)
大関・貴景勝の綱取りが消滅した。日本相撲協会に「左膝内側半月板損傷」との診断書を提出して休場。一人横綱の照ノ富士も初日から休場しており、横綱、大関陣の不在は昭和以降初の異常事態となった。師匠の常盤山親方(元小結・隆三杉)によると再出場せず、夏場所(5月14日初日、東京・両国国技館)は一転して6度目のカド番となる。看板力士がいなくなった土俵は平幕の翠富士が単独トップ。1敗で小結・大栄翔と平幕の高安が続く。
左膝は限界だった。綱取りに挑んだ貴景勝が、途中休場という苦渋の決断を下した。電話取材に応じた師匠・常盤山親方によると、勝った3日目の正代戦で受傷。翌日以降は患部をテーピングで固めて強行出場した。だが、3敗目を喫した6日目の御嶽海との13秒2を費やした相撲で悪化したとみられる。
15日制が定着した1949年夏場所以降に横綱になった33人中、前半戦で3敗を喫して昇進した例はなく、絶望的な状況ではあった。御嶽海戦後に病院を受診し、本人から師匠に「相撲を取れません。休場させてください」と申し出た。再出場に関して、同親方は「治りが遅くなるので余計なことはしません」と否定。綱取りどころか、このまま負け越せば夏場所は自身6度目のカド番となる。
番付が危機的状況となった“大荒れの春場所”だ。125年ぶりに1横綱1大関となった先場所に引き続き、今場所も初日から横綱・照ノ富士が休場。貴景勝もいなくなり、昭和以降では初めて横綱・大関陣が不在となった。常盤山親方は「顔には出したりしないけど、本人が一番悔しいでしょう」と、弟子の無念さを思いやった。大関在位23場所目となる夏場所での復帰に向け、手術はしない意向。同親方は続けて、「治療に専念して、膝を鍛えながら、調整して5月場所でいい相撲を取れるようになるのを目指してやるだけ」と明かした。
この日、看板力士がいない幕内後半戦を土俵下で見届けた佐渡ケ嶽審判部長(元関脇・琴ノ若)も「早くけがを治して来場所は元気に出てきてほしい」と残念そう。八角理事長(元横綱・北勝海)も「けがをしない体をつくらないといけない。横綱はもっとプレッシャーがかかるわけですから。精神的にしっかりしている大関ですから、期待してますよ」と、不屈の大関の復活を願った。(竹内 夏紀)
◆貴景勝の主な綱取り 横綱昇進の内規は「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」となっている。
▽21年初場所 20年11月場所に13勝2敗で大関昇進後初Vを果たし、綱取りに挑んだが、初日から4連敗し、左足首じん帯損傷で10日目から休場した。
▽23年初場所 22年九州場所は優勝決定ともえ戦で敗れて次点の12勝3敗。場所後の横綱審議委員会で高村正彦委員長(当時)が高レベルVの場合の昇進可能性を言及し迎えた初場所は優勝を果たしたが12勝止まりで、昇進は見送られた。