大相撲の夏巡業が5日、東京・立川市のアリーナ立川立飛でスタートした。巡業は新型コロナウイルスの感染拡大で中止が続き、2019年12月の冬巡業以来、約2年8か月ぶりの再開。従来の夏巡業は東北や北海道を回ることが多かったが、今回は感染拡大防止の観点から関東近郊限定で14日まで計5日間開催される。さまざまな感染対策が施された“新様式”の巡業を、約7年ぶりに取材した三須慶太記者が「見た」。

 新たな形での巡業が始まった。主催者によると、約3500人の定員に対して約2200人が来場。声援は自粛が求められたが、拍手は戻ってきた。横綱・照ノ富士(30)=伊勢ケ浜=は「ファンがあっての大相撲だし、自分も楽しみたい。お客さんを喜ばせられるように精いっぱい頑張りたい」と意気込んだ。

 昨年、担当に復帰した私にとっても約7年ぶりの巡業取材。いろいろなものが様変わりした。入間川巡業部副部長(元関脇・栃司)が「(本来は)巡業の楽しみは本場所にはない力士との(近い)距離感」と話すように、時に看板力士の横綱、大関であっても直接触れ合えるなど、壁がないのが魅力だ。近年は諸事情により実施されていなかったが、力士と子どもの稽古で角界を志したケースも少なくないと聞く。

 ただ、依然としてコロナ禍にある。この日は濃厚接触者を含めコロナ関連で12人(けがも含めれば13人)の幕内力士が休場。隔離期間などが過ぎれば随時、合流は可能だが影響は大きい。関取衆は幕内だけの参加だったが、十両力士7人が補充された。ファンサービスも従来の握手会は写真撮影会へ変更。警備員が各所に配置され、力士とファンの動線は分けられた。

 入間川副部長は「非接触型のファンサービスしかできないので、非常に心苦しく、残念」と頭を下げた。稽古でも密を避けるため1組5、6人のグループ制を採用し、土俵上以外はマスクを着用。取組時には土俵下の勝負審判らもマスクをするなどの対策が施された。

 “第7波”のさなかでの開催は賛否両論あるだろう。ただ巡業は本場所と並ぶ柱ともされる。難しい判断だが、いつかは再開にかじを切らなければならない。照ノ富士が「巡業を開催できたことは一つでも二つでも前に進んでいる」と話せば、入間川副部長も「今日が大事な第一歩」と意義を説いた。歯車が大きく回り出したことは確かだ。(三須 慶太)