セルジ・サンペールからボールを受けると、右足でコントロールし、浮き球のパス。ピンポイントで古橋亨梧の足下に収まり、貴重な追加点を演出した。

 この男の手にかかれば、簡単に見えてしまう。だが、横浜FC(第19節、ヴィッセル神戸が5-0で勝利)の守備網を無力化した、月間ベストアシストに相応しい高度なパスだったのは間違いない。

 同胞の盟友からボールを受けた時、異次元の「サッカー脳」を持つアンドレス・イニエスタは、どんなことを考えていたのか?

「目の前にディフェンダーがいたのを覚えている。そういう状況でもピッチを俯瞰的に見られるように心がけている。ボールを引き寄せてチャンスがあるか見ていた時に、キョウゴが裏を取れるという感覚があったのでパス出した」

 ただ、パスを出した瞬間、古橋はまだ走り出してはいなかった。

「コンマ何秒で決断をしなければならない。あの場面では、ボールを引き寄せたタイミングで、パスを出すスペースができた。キョウゴは自分がああいうパスを出すかもしれないということを知っているし、自分もキョウゴが裏のスペースに走り出すことを知っている。そうした共通理解から生まれたゴールだった」

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 まさに、阿吽の呼吸で奪った1点。イニエスタは「ゴールに終わったことが大事。得点にならなければ、ああいったパスも意味がない。キョウゴが素晴らしいトラップからシュートを決めたからこそ、喜ぶことができた」とフィニッシャーを称えた。

 その古橋は、スコットランドの名門セルティックへの移籍が決定した。イニエスタにインタビューをしたのは、退団が発表される少し前だ。得点ランキングのトップに立っていた26歳のアタッカーについて、元スペイン代表MFはこう語っていた。

「今年に限らず、ここ数年、常に成長している。とくに今シーズンは得点ランク1位で、うちのチームを牽引してくれている。相手にも脅威となっている」


2人のコンビネーションは、「彼とチームメイトになって、徐々に理解を深めてきた」という。

「彼のようにスピードがあって、ミッドフィルダーがパスを出すタイミングを計らって動きを入れてくれる選手は、僕らのようなポジションにとって重要だ。彼のような選手がいることで、パスがゴールに繋がる」

 残念ながら、もうこのホットラインは見られない。「決めてこい」――。古橋の背中を押すように出した格別のパスは、“惜別のアシスト”となった。

取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)